sh101's blog

ちょっとお小遣いを貯めればなんとかなるシンセを語る日々

KORG ELECTRIBE Waveの習作公開。

元気ですかあー!元気があればなんでもできる!
血糖値を下げる薬があれば長生きできる!1日5錠っダーッ!

さて、アントンはさておき、KORG ELECTRIBE Waveをインスコして3日。
機能の習得を兼ねて作ってみた曲をうpしてみましたよ。
もうね、このインスコだのうpだのっての書いちゃうがアラフィフネット外道の情けなさですな。

ま、それはともかく曲のタイトルは、たまたま上の画像に使ったフォントの名前から拝借しました。
まあ速報的にできたパターンを繋いだだけで、トータル2分もないので、サクッと聴いてやっていただければ幸いです。

で、打ち込んでみて気づいたことを少々。

ドラムパートのシーケンス画面にあるROLLは、ものすごくありがたい機能ですな。打ち込んだステップに対して1/2から1/4の音符でロールしてくれるんだけど、これ、シンセパートにも欲しいなと思いました。

それからトータルエフェクトは、ソング側でもコントロールできるといいなと。
マスターコンプの設定など、微妙なパラメータを修正のたび全パターンを直すのもなかなか骨が折れます。
パターンから持ってくるか、ソングとして新たに設定するかのチョイスができたらいいなと。

それからモーションシーケンスを多用したパターンが、ソングで聴くと処理落ちしちゃう件。
パッド系もノート長に気をつけないとループさせた時に音が鳴らなくなる不思議な現象もありました。

ソングで鳴らした時の不具合は、余計な音をイレースしたりレングスを短くしたりで対処したので、逆に聴きやすくなったかもしれませんけれども。

何はともあれ芸術の秋、ソファで寝ながら音楽を作るという醍醐味はiPhoneゆえですな。所要時間=10時間てなとこですが、現場からは以上です。

実はオッチャンに優しいELECTRIBE Wave

8月にiPad用アプリとして発売されたKORG ELECTLIBE Wave。iPad2しか持っていない僕には手の届かないアプリだと知りつつも、この動画にはやられました。

これはもう、iPadだからこそ映えるアプリなんだなと、斯様に考えておりました。

だから今月からiPhoneにも対応したと知った時、僕の脳内で「ごちゃごちゃ言わんと、早よポチってまえ」「でもな、画面こまいやろ?タッチしにくいんちゃうか」と、2人の関西人が議論していましたが、愛知県製の指は素直にポチっておりました。

アイコンクリックでいきなり全てが読み込まれる臨戦態勢。
ずいぶんと攻めたUIに変貌しましたな。

これがシンセパートのエディット画面です。しかしパラメータをよく見たらこりゃ普通のシンセだわ(見た目は)。
音源部は完全にリファインされ、ベースやメロディどころか、コード演奏も可能です。これにより、リズム専用機からミュージック・ワークステーション化したことがよくわかります。

で、音いじりの欲求はひとまず置いておき、一番上の[PTN]を[SONG]に切り替えて、7曲のデモをじっくり堪能すべし。
このアプリがどこまで作り込めるのか、どんな先鋭的なサウンドが鳴るのかなど、しかと脳に叩き込んでおきましょう。

画面をドラムパートに切り替えました。かつてのER-1ぽさを残す唯一の画面です。
こちらは8つのパートにPCM音源を自由にアサインできます。 波形の名前を見るとDDDだのKPRだのLNだのT8だのT9だの、既視感と既聴感のあるサウンドも完備。

T8…もといTR-808由来の1パッドによる入力についてはもう説明不要でしょう。
これまでのiELECTRIBEシリーズとは異なり、ドラムパートにモジュレーションはありませんが、パートごとに異なるエフェクトをかけられるようになりました。

こちらがミキサー画面。
シンセ8/ドラム8のパート構成がよくわかります。ライブパフォーマンスには必須でしょう。

さらに入力にはおなじみのカオスパッドも。こちらの動きもRECで記録されます。
残念ながらiELECTRIBEに搭載されていた、ランダムにビートを刻んでくれるFLUTTERは消滅してしまいましたが、スネアやハットにGRAIN SHIFTERをかけてパッドでiFXをグリグリやるとなかなか気分かと。

さて、ELECTRIBE Waveは単にパートが増えただけではありません。シンセに音階が付けられるようになっただけでもありません。ポリフォニックになっただけでもありません。
リファインされたシンセパートの音源部こそ、このアプリ最大の売りと言ってよいでしょう。

これがウェーブテーブル音源からの波形選択画面。
細かいことはさておき、波形がこれだけ並ぶとどれを使えばよいか迷いますな。

さらにPOSITIONスライダーでそれぞれの波形が変化するため(最近のシンセでSHAPEだのCOLORだの言われるような効果、だと思う)、派生したバリエーションもとんでもない数になりそうです。

それとシンセパートには2基のモジュレーターが搭載されており、POSITIONをアサインすると、PWM的な効果を発揮してくれます。もちろんBPMともシンクできますし、表示された3D波形がムズムズと動いちゃって、まあどうだ、こりゃ楽しいぞ。

あと波形はタブ切り替えで「M1 PIANO」のようなPCM音源も選べます。これなら最近の音源トレンドに疎いオッチャン世代も安心ですね。

つかですね、iELECTRIBEにモデリングシンセが4基しかなかったということは、それだけモデリング音源が演算によりメモリを消費してたんじゃないかと。
なので音源に限れば一概に比較できないわけですけれども。

それはさておき、最初の方にも書きましたが、実機のSONG機能が復活しております。これなら昨今のクラブプレイに疎いオッチャン世代も安心ですね。
アコースティック音源が豊富なKORG Gadgetとの棲み分けも自ずと進みます。

ちなみに懸念どおり、iPhone 7 PlusではiELECTRIBEに比べミスタッチの頻度は高めです。
その意味からも、リアルタイムに音をあれこれするより、作り込んだパターンをSONGに並べていく、昔ながらの曲作りに向いてるかなと思いました。
まあiPad Proくらいのサイズならミスタッチもないでしょうが。

それから大事なこと。
Bluetooth MIDIコルグ・ネイティブ・モードに対応してくれたことで、nanoKEYStudioとの相性が実にもうっ!てな感じ。
全てのノブとボタンとパッドが見事なまでに機能し、このアプリのために生まれた専用コントローラじゃないの?てなくらいのマッチング加減なので、本格的にハマったらご検討を。

他にも制作中の曲からコードを自動的に抽出してパッドに割り当ててくれるというFetch機能、ドラムパートに様々なノリを加えられるGroove機能など、トラック作成に便利な機能もあるわけですが、平日の夜じゃそこまで試しきれないので、その辺は休みの日にじっくりと。

斬新な色づかいのUIに尻込みしちゃうかもしれませんが、これ、案外オッチャン世代に優しいアプリかもしれないな、というのがオッチャンの素直な感想です。

それなりの曲に仕上げたいけどこれまでのELECTRIBEシリーズでは物足りない、かと言ってKORG Gadgetでは選択肢が多くてまとまらない、とお嘆きの貴兄にはビシッとフィットするELECTRIBE Wave。

騙されたと思ってぜひ。

ELECTRIBE WaveがiPhoneに対応

いや、驚きましたよ。

前回のブログを9/30にアップした翌日に、iPad用アプリのKORG ELECTRIBE WaveがiPhoneに対応しちゃったんですから、なにしろ。んもう、早く言ってよ。

KORG ELECTRIBE Wave

KORG ELECTRIBE Wave

  • KORG INC.
  • ミュージック
  • ¥2,400

実は前回の続編としてELECTRIBE Waveについて書きたかったので、iPadの対応バージョンを調べようと思ったら、普通にiPhoneから購入できるではありませんか。

しかも10/15までセール中とは。無論、拙iPhone7 Plusに落とし込んでやりましたよ、ええ。

帰宅したら存分に楽しんで印象を書き込もうと思ってます。
ひとまずお待ちを。

iELECTRIBE for iPhoneの存在を思い出す。

この1ヶ月仕事に忙殺されていて、枕元のmonotribeをブリブリ言わせる程度の音楽活動だったアタクシですが、激務明けでiPhoneのメモリ整理を始めたところ、このアプリの存在を思い出すという。

3年前のリリース時にダウンロードして、プリセット鳴らしただけで放置していたため、本体から消滅しておりました。
当時はSYSTEM-1やらTB-3なとのハード物にハマってたので、iOSアプリはそれほど弄ってなかったんだなぁ。

「どんなアプリだったっけ?」

と、再インスコ
ひとまずまたプリセットをDJ気分で鳴らしていって「あー、こんな音だったわ」と脳内回顧録を綴っておりました。

お察しの通り、アタクシには元祖ELECTRIBEにさほど思い入れがなく、初代ハードの出た1999年頃は、専らローランドのMC-303を使っていたように思います。

TR、TB、JUPITERシリーズなど豪華なPCM音源を揃えたMC-303に比べ、当時のELECTRIBEサウンドはあまりにも貧弱に思えたものです。
同じ「グルーヴボックス」というジャンルに押し込まれていたものの、両者の性格はまるで異なっていました。

ELECTRIBEはVAシンセとしてベースやメロディ入力に特化したEA-1と、リズム音源のER-1の2種が発売されました。かつてのSUPER Drums(DDM-110)とSUPER Percussion(DDM-220)を想起するKORGらしい商品展開に「一緒にすりゃいいじゃん」と思ったのもまた事実。

ただいま思うと、MC-303はオールインワンPCMシンセの発展形であり、ノブがあったにせよ、リアルタイムでの音弄りは決して心地よいものではなく、「この808カウベルがもぉ」「あのTBサウンドだから」「当時98万円のJUPITER様の音ですし」というバイアスで使っていた気も。まあ元が取れるほど酷使しましたけれども。

それが2018年のいま、アプリに生まれ変わったELECTRIBEを鳴らしているだけで楽しくなっちゃうわけで、ホントに「音は世に連れ、世は音に連れ」だな、とタバコをくゆらせながら耽るわけです。

さて、今回のiELECTRIBE for iPhoneは、iPad専用としてリリースされたiELECTRIBE同様ER-1を見た目から出音までシミュレートしたアプリ。
そのため正確な音程でベースやメロディをシーケンスさせるのはちょいと難易度高め。

8パートのうちVAシンセは4パート。残りの4つはハット、クラッシュ、クラップのPCM音源。
各パートに4種の波形があり、WAVEボタンで切り替え可能です。クラップにはさりげなくどこかで聴いたようなスネアも入ってます。

特徴的なのは、フィルタを使わず波形選択とモジュレーションのみで音作りを行う点。
これにDECAYとLOW BOOSTが加わる程度ですが、意外にもバリエーションは豊富。PCM音源にも同じようにかけられるので、volca sampleにハマったクチの方は楽しめそうですな。

そして3年前はまったくスルーしていた(気づけなかった)のが、このFLUTTER。

SHIFTボタンを押すとACCENTに代わって出てくるんだけど、早い話がkaossilator。パッドを押す位置でフレーズやパラメータがランダムに変化する機能で、単調と思えるフレーズがウソのように楽しくなります。
下手すると、1パターン作ってFLUTTER弄るだけで数分の曲展開も可能。

ちなみにプリセットER-1から移植されたプリセットのA15「Pitch Motion」は、このFLUTTERで遊ぶと、かの坂本龍一の名作「E-3A」リミックスが簡単に作れるので、その筋が好きな方はぜひトライを。実機では再現不能ですから。

ただねー、FLUTTERを記録する機能がないのがちょいと残念なんですよ。

残念ついでにもうひとつ書いておくと、WISTやらVirtual MIDIやらに対応してるのに、ワイヤレスMIDIに未対応。
nanoKEY STudioが繋げないのはちょいと悔しい。無論USB経由のMIDIコントロールはサポートされてるけどね。

先に書いたようにmonotribe漬けだったところに、このアプリを再起動すると、やはりリアルにノブでグリグリしたくなるんで、古いパッドコントローラーに繋いでみようとケーブルを探してるとこです、うむ。

今さらながらmonotribeを讃える

久しぶりにmonotribeを引っ張り出してmini kaoss pad 2Sを繋いで鳴らしていたら、思いの外没入してしまった。
とんでもない時間泥棒であった。迂闊だった…


最近volca mixを買って、配線まみれになっていた反動なのかもしれないが、単体の機器をひたすら弄り倒したのは、monologueを買った時以来だ。

以前も書いたと思うけど、monologueはminilogueではなく、monotribeの系譜にあたるシンセだと考えている。
それでいて、monotribeの方が優れていると感じる点はまだまだある。

超高速LFOの搭載、エンベロープの割り切り※など、monotribeの特徴を受け継ぎながら、音色ごとに記憶できるシーケンサーを搭載し、スリム鍵盤をインターフェースに採用したmonologue 。

対してmonotribeの最も目立つ欠点にして最大のメリットは、メロディが作りにくいということだ。

monotribeのリボンコントローラーとmonologueのスリム鍵盤、曲作りに適しているのはどう考えても後者だ。

しかしmonotribeを弄り倒した先にあるのは作曲ではなく、音を楽しむアートフォームしかあり得ない。

いや、こんな遠回しの言い方もアレだからぶっちゃけよう。

要するに、ずっと鳴らしていても飽きちゃうんで、ノブやスイッチを弄りまくって偶発的にカッコいいフレーズと出会うまで格闘しなければならない、という宿命こそが、monotribeの素敵なポイントなんですな。

対してmonologueのプリセットサウンドには格好のよろしいシーケンスがセットされている。だからしばらく鳴らしておいても飽きない。
だから、音作りのためにノブを回せなくなる。

これはもう、決定的な違いだ。

実は今月、こんな記事を読んだのだけど、Pioneer DJのシンセAS-1には、プリセットが495音あり、しかもそれぞれにシーケンスがセットされているそうな。

495もあれば、お気に入りのサウンドやシーケンスはいくつもあるはずで探し甲斐がある。プリセットを順に鳴らしてるだけでお腹いっぱいだろう。

これが、いままさに僕がmomologueに対して思っていることでもあり、もっと言えばvolca fmやSYSTEM-1についても同様に、音作りする前にある種の満足をしてしまうわけである。

monotribeに話を戻せば、音色についてはまったく記憶してくれないし、シーケンスも16ステップを1パターンしか保持できない。
ましてやインターフェースはリボンコントローラーである。メロディアスかつリズミカルなパターン作成には向いてない。

だからアクティブステップや、プレイしながらの抜き差し、あるいはリアルタイムに音階を適当に押さえて変えていく。いや、正解が見つからないから、とにかく指先を動かして変えざるを得ないのだ。

そこに生まれたフレーズやサウンドに一期一会の精神で向かい合う。これがmonotribe道なのだ。

もう6年も前だけど、こういうムービー見ちゃうと、やっぱりmonotribeにはこの遊び方しか見つからない、と思ってしまう。

あとは内臓された独特のリズムサウンドが、volca beatより断然好み、ということもあるんだけどね。

とにかく全てにおいて満足できる、というマシンはなかなか存在しないのだなぁと思う今日この頃であります。


※実際はminilogueをモノ化してコンパクトにするために削ったのだろうが、monotribeでの実績があったからこその割り切りだと思われる。

volca mixを買ってみた。

ということで、4ヶ月ぶりの更新です。

3月に発売されて、なんとなくステイしていたvolcaシリーズの最新作"volca mix"を買ってみました。

今さらvolca mixが何なのか、こんなブログに足を運んでくださる好事家の皆さんに説明するのもアレなんですが、簡単に書くと、volcaシリーズとの接続に特化したアナログミキサーですね。

ACのみの1way電源は、volcaシリーズとして初。
volcaシリーズを連れて野原や河原に行っても、残念ながらこの機種だけ使えないのです。
その代わり、コンセントがひとつでもあれば最大3台のvolcaを繋ぐことが可能という、インドア派にはたまらないミキサーです。

そしてvolca同士を同期できるSYNC端子もあるわけですが、このvolca mixには再生ボタンが装備されています。
実は、これが今までありそうでなかった便利機能。

これまでvolca同士を一斉に再生したい時は、SYNC接続した複数のvolcaのプレイボタンを「せーの」で同時押しする、というファミコンの裏ワザみたいな方法しかなく、3台以上の同期ともなると、誰か暇そうな人を呼んでくるか、足の指あるいはアゴを使うしかない、という悲しい有り様でした。

volca mixをSYNCのマスターとして接続すれば、ボタンひとつで一斉に鳴り出してくれるわけです。
方法は至って簡単。接続したvolcaのプレイボタンを押してスタンバイしておき、mixの再生ボタンを押すだけです。

volca mix単体で見ると、他のモデルに比べてパネルがずいぶんスッキリしている印象ですが、これには理由があります。
3台繋いで電力を供給し、シーケンスを同期させようとするとパネル上がケーブルだらけになるからです。

DC-DCケーブル3本、オーディオケーブル3本、SYNCマスターとした場合でもケーブル1本か必要。同期には他のvolcaのSYNC同士を繋ぐため、さらに2本のケーブルが必要です。ということで、上の画像にあるようなケーブル地獄と化します。

volcaシリーズのコンセプトには「スマート」なる文字は存在しません(たぶん)。
とにかく繋いで繋いで繋ぎまくってレッツ・グルーヴなわけです。

ボタン類のレスポンスはなかなか良く、ミュートボタンをテンポ良く押すことで、なんちゃってDJプレイも楽しめます。

またマスターエフェクトとして、エキスパンダーとダイナミック・レンジ・コンプレッサーを搭載。前者はモノ音源に広がりを加え、後者は低域をトリガーにサイド・チェイン効果を加えることができます。
内蔵スピーカーだといまひとつ変化がわかりにくいのですが、ヘッドホンを通すと、意外と使えることがわかります。

このvolca mix、KORG製であればvolca以外のマシンの一部でも同様の恩恵があります。
monotribeとmonologueを繋いでみたところ、ちゃんと電力供給され、シーケンスもしっかり同期してくれました。

ただ、付属のケーブル類が相当短いため、機器の配置はかなり限定されます。volcaよりサイズがちょいと大きいmonotribeでもコード長が足りません。
せめてオーディオケーブルくらいは1mくらいのものを用意しとくと良いかも。

ちなみに、僕はこれまでvolca同士のプレイではベリンガーのQ1204USBをミキサーとして使っていました。
マルチエフェクトを内蔵していて便利でしたが、ACを使おうにもコンセントの数が足らなかったり、乾電池で駆動させても寿命が気になったりと、結構心理的に面倒な局面が多かったので、volca mixには期待できるかなと。

minimoogがiPhoneにまでやってきた。

これを知らなきゃシンセを語るな、とまで好事家が叫ぶシンセがあります。
それがミニモーグでございます。

これぞ本物のシンセ、という表現もされてました。まあ電子音に本物も偽物もないと思うんですが、兎にも角にもこれを知ってないとシンセは語っちゃまずいそうです。ああ、良かった知ってて。持ってないけど。

確かに昨今販売されている製品を鳴らしてみても、モーグのシンセは別格と言う他ないほど太い音がします。本物かどうかはさておき、音がデブ、それだけは確かです。

つい最近まで生産されていたミニモーグは、日本円にして40万円前後の価格がついていたのです。
僕が小学生の頃読んだ『シンセサイザーに首ったけ』という書籍に載っていた、1981年当時の価格とさほど変わってません。

1970年に生まれ間もなく50年。回路的には進化しているものの、パネルレイアウトはほぼそのまま、というクラシックにも程があるシンセで、好事家の心の拠り所なのです。

時代は移り「ソフトシンセ」という、なんだか洒落た豆腐みたいなフニャフニャのPC世代においても、その太いサウンドの再現はひとつの憧れであったようです。

現在はハードシンセメーカーとしても知られるArturiaは、かつてミニモーグのPC用プラグイン"Minimoog-V"を生産していて人気を博しました。
2012年7月にmoogのライセンスが切れる寸前に、無料ダウンロードを敢行した挙げ句、名前を"Mini-V"と変えて販売継続したことで話題となりました。

もうお前らには「ミニ」で通じるだろ、と言わんばかりの明快さです。クルマの世界じゃ「クーパー」でしょうが、その手の好事家はミニと言えば「モーグ」なのであります。

そして2013年、そのMini-VをベースにiPad向けアプリとしてリリースしたのが"iMini"でした。

こちらはアスペクト比的にもなかなかにミニモーグっております。
実機を持ってないので、確認のしようがないんですけども、iPadに突っ込んで「これがモーグの音かぁ」なんて思いながら弾いておりました。
実機とこのアプリを弾き比べて「オー似テル似テル」とか言ってる海外のレビュー動画も観ました。

やがて僕のiPadが娘のようつべ再生専用機と化したので、iMiniもiPhoneでも使えるようユニバーサル化してくんねぇかな、と思っていたところ、ついに本家モーグ様がユニバーサルアプリをリリースされました。

その名も"Minimoog Model D App"。

こちらはiPadの画面。iMiniとどちらがお好みでしょうか。

しかし、本家本元は、その名を略さないものです。前田慶次はやはり前田慶次郎利益でなければならないのです。

実はモーグiOSにアプリをリリースしたのはこれが初めてではなく、2011年に"Filtatron"というフィルターモジュールをシミュレートしたアプリ、さらにベクトルシンセの新種ともいえる"Animoog"を発売します。

Filtatron

Filtatron

  • Moog Music Inc.
  • ミュージック
  • ¥600
Animoog for iPhone

Animoog for iPhone

  • Moog Music Inc.
  • ミュージック
  • ¥600

この後モーグiOSアプリはしばらく途絶えるわけですが、一昨年突如リリースされたのがモジュラーシンセ"Model 15"でした。

Model 15

Model 15

  • Moog Music Inc.
  • ミュージック
  • ¥3,600

ルックスから本気のモジュラーかと思ったんですが、弾くというよりは鳴らすのが目的のようで、プリセットの趣向もRolandAIRAから出たPLUG-PUTシンセ"SYSTEM-100"に限りなく近い、綺麗なシーケンスの流れる箱的な印象でした。

そして今回登場したのが、まさに全世界の好事家が待ちに待った"Minimoog Model D App"なのであります。

iPhoneで見ると、画面の1/4近くがメニューで覆われています。

ここで上部の[PLAY]ボタンを押すと、上部の圧迫感が薄まります。

表示領域が広がったのに、なぜか左端のController群が消えてしまうのはご愛嬌。

しつこいようですが実機を持ってないのでかなり適当に書きますけれども、この"Minimoog Model D App"、なかなか太いサウンドをお持ちです。

まあ本家本元の商品ですし、過去の名機があらかたDAWプラグインで蘇り尽くした2018年ですので、パラメータの挙動とサウンドは実機のそれだろうという仮説のもとご紹介すると、大きく異なるのは4ポリフォニック仕様となっている点。

これはプラグイン音源ではもはや当たり前で、iOSにおいてもKORGが先行して復刻したARP ODYSSEiもポリ仕様でした。

ここで気になるのは、ただでさえ存在感の強いMinimoogの音で和声を鳴らしたら聴くに耐えないものにならないのかしらん?ということ。
いろいろ試した結論としては、フィルター全開の音はやっぱり煩いかなと。少なくともアタックタイム0での和声は、立ち過ぎな感じもします。
この点を逆手にとれば、逆に存在感のあるパッド系は作りやすいと思います。

そしてアルペジエイター、ディレイといった、もう実機に付けといても何の問題もないFX群には、"BENDER"というパラメータがあります。
これは鍵盤左のピッチホイールとは違い、あくまでエフェクトの一種で、VCAを出た後にさらに個別のLFOを通してサウンドに厚みや不気味なエフェクトを付けられるもので、使用感としては効果の極端なコーラスというところでしょうか。

個人的にハマった機能は"LOOPER"。
適当にプログラムを切り替えながらアルペジエイターを鳴らしてみるとミニマル・ミュージックが一丁あがり。パフォーマンスにはもってこいでしょう。

ちなみにFXは全部で4種類。それぞれが、古い事務机の引き出しのようになっていて、全部出すとフロントパネルに覆い被さってしまうのがちょっと面白いです。