シンセメーカー雑感
お値打ちなシンセについていろいろと書き散らしている当ブログですが、「あれ、こないだ国内で発売されたアレは?」という方もいらっしゃるかと思われます。
別に「このパチ◯ンがぁ」と、後ろ髪を触りながら武田鉄矢のモノマネをする気もないですし、先日散財検討のために楽器店で製品にも触れてます。
なおかつ、日頃このメーカーのミキサーでささやかなシンセライフを満喫している身なので、その品質を批判するつもりはございません。
ただアタクシとしては、各メーカーが協業してより良いシンセ作りに励まれている昨今、企業同士のリスペクトは最低限必要じゃないのかなと思います。
仮に「世界一売れている」が事実にせよ、取り上げることで良い思いをしない方がいるのなら、ここのシンセについてはしばらく言及しない方がよいのかな、という気分でございます。
ご了承のほど何卒。
CRAFT synth2.0がブレイク中。タッチパネルがトレンド化?
イギリスのシンセメーカーModal Electronics (モーダル・エレクトロニクス)が、モノフォニックウェーブテーブルシンセ「CRAFT synth2.0」を発表し、クラウドファンディングサービスKickstarterで出資募集しているようです。
開始から24時間で目標額の調達に成功したそうで、新春早々景気のええハナシでございますな。
音源部にVA音源やモーフィング波形を含む8つのオシレーターを採用したり、リングモジュレーションやクロスモジュレーションを搭載したりと、なかなか過激な音色が出るようです。
プログラミング可能なアルペジエイターや、SYNC可能なディレイも付いており、ひとりでも寂しくないやい的な機能満載です。
10日までは108ポンド(約1万5千円)で販売されるとのことで、ガジェット好きなら手に入れるべきでしょう。
僕は散財直後なので諦めてますが。
"2.0"という名からわかるように、CRAFT synthには先代バージョンがありました。
『初歩のラジオ』の広告に出てそうな、工作キット感が満載です。
Modal Electronicsは、日本では馴染みがないメーカーですが、001、002、008という独特のデザインを持つシンセをいくつか発売しています。
これらのモデル、お値段は結構するようですが、個人的になかなか好みです。
昨年は4ボイスのVAシンセ「SKULPT synthesiser」を発表し、同じくクラウドファンディングで受注、こちらも目標の3倍売り上げたと話題になりました。
SKULPT synthについて知ったのは去年の9月頃。
まさに僕がシンセを選ぶ基準(こちらを参照)を全て満たしていたので、レビュー動画も興味津々で観てたんですが、日本への発送について不安もあり、選択肢から外してしまったんですよね。
国内でFiveGさんなど受注していた店舗もあったと知ったのは、AS-1を購入した年末でした。
それにしても何かい、AS-1といい、UNO SYNTHといい、SKULPT synthといい今回のCRAFT synthといい、タッチパッド式鍵盤は最近のトレンドなんですかね。
4者に共通しているのは、シーケンサーやアルペジエイターは当たり前、エフェクトも付いてスタンドアロンで遊べつつ、MIDIキーボードとの接続がケアされていたり、PC用にエディターを配布している点。
この辺りは廉価シンセの先駆者、KORGのvolcaシリーズにはなかったところ。
音源部に限って見ても、AS-1はProphet-6と同レベルの音作りができ、同じく完全アナログのUNO SYNTHは自己発振しない点を除けば、かつての入門モデル以上の標準的シンセですし、Modalの2機種もVAではありつつ、パラメーターはワンランク上のシンセ群を圧倒するほど豊富です。
それぞれの価格を見ると、monotronに狂乱していた9年前が遠い昔のようです。
音源部やコントローラー、シーケンサーという機能面になるべく資材を注ぎ、インターフェイスを簡素化してお安く提供、というのはある種の良心かもしれません。
ユーロラック系の流れとはまったく逆の、オールインワン的展開として見るのも一興ですな。
あとは個人的には、ノブが30個以上付いたMIDIキーボードが出れば、こうした高機能シンセが本格的な音楽現場に普及するのではないのかな、というところでございます。
KORGもまだまだ頑張ってる?
平成最後のお正月を前に、欧米諸国ではこんな記事が出回っておりました。
今年minilogue xdという新機種が出るのでは?という話題がリークと思しき画像とともに騒がれております。
その画像から、prologueに搭載されたマルチエンジンがOSC3に使われているらしき点。そしてシーケンサーはmonologue同様の16ボタン仕様、コントローラーがジョイスティックに変更、などの点が推測されています。
これまでの◯◯logueシリーズでの進化が反映されているところから、割と真実味もあるとのことで、気の早い人は発音数や価格に興味を持っている模様です。
実は先月のAS-1購入前、minilogueも選択肢のひとつでしたので、「もしもの涙目」を回避できて安心してしまった自分がいるのですが。
それと、このminilogue xdより先に、volcaシリーズについても、このような記事が上がっていました。
2機種についての記事ですが、まず"volca modular"は、その名の通りモジュラータイプのアナログシンセのよう。
よく見るとパラメーターごとに3ピンFANコネクタのようなものが見えてます。いや、でもこれ、サイズ的にはもっと小さいな。しかも画像が歪んでるのか、ノブが随分とめり込んでるように見えます。
一方の"volca drum"ですが、こちらはデジタルドラム音源だそうで。LEDディスプレイから想像するに、レイヤーで波形を重ねていくんですかね。サウンドは6パートあるようですが…。
ただですね、ずっとシリーズを買ってきた自分としては、「ホンマかいな」という気持ちが強く。
デザイン的にもレイアウト的にも、これまでのvolcaにはなかった「あれ?」という違和感があって、なんとなくガセ臭も漂うんですけどね。
ともあれ、高橋達也さんというアナログの牽引者を失いながらも、prologueを開発してきたKORGのこと。今後これらの情報がガセでないかを含め、見守っていきたいと思っております。
(19/1/16更新)ガセじゃなくガチでした…
二〇一九年の鳴らし初め
昨年はお世話になりました。
今年もお世話になります。
元日は生放送のために仕事始めとなったのですが、本日からまたしばらく年始休みとなりまして、心機一転、書き初めならぬ鳴らし初めを執り行いました。
こちらは単にAS-1のデモ6音分のシーケンスをBPM130にして重ねただけでございますけども、特にコンプをかけなくてもそれなりに音圧があって、どの音も埋もれないというのは流石であります。
一夜明けて、こちらは1980年頃の坂本教授っぽい音を作って4音重ねました。まあかなり「HAPPY END」に寄せましたが。
鐘のような音は専らLFOによるモジュレーションを使い、エフェクトのリングモジュレーターは使用してません。
どこかで読んだんですけど、Prophet系のモジュレーションはかなりデリケートで、かかるかかかってないか位のところで絶妙な変化が起こるそうで、AS-1でも同じ印象でした。
逆にパラメーターを極端に上げると、まるで使えない音が生まれてしまい、昨今の「どうセッティングしてもそれなりの音になる」アナログとはかなり違うもんだなぁと。
ドラムは1音でバス、スネア、ハットを鳴らしてます。音源はOSCは使わず、LPFの自己発振をLFOモジュレーションで加工、仕上げにレートを最高にしたBBDエフェクトを振りかけると、『B-2UNIT』感満載のドラムの出来上がり。
何はともあれ、こんな感じで1音決めるのに30分くらいかけるほどにダラダラと過ごしておりますが、自分も含めて皆さま、本年も良い一年でありますように(取ってつけた感 )。
キーマガのYMO機材特集がすごい。
軽く立ち読みするつもりが「やばい、これは完全保存版だわ」と、レジへ向かうワタクシ。
今月発売のKeyboard magazine(2019冬号)の話です。
先日もリマスタリング・ベスト盤『NEUE TANZ』の話題をしましたけど、今年は(今日で終わるけどさ)YMO結成40周年なのです。
そこで前号(2018秋号)に続きYMO特集が組まれたわけですが、今回はこんな駄目ブログを読まれるような方には感涙必至の機材徹底検証です。
YMOの使用機材については、これまでも『大人の科学マガジン シンセクロニクル』などで部分的に触れられていましたが、今回のキーマガさんからは、バラエティ番組に娘と出演するアニマル浜口さんのごとき気合いが、ひしひしと伝わってまいります。
なんと65ページもの大ボリュームで、YMOチルドレン御一行様には垂涎モノです。
まず機材の変遷が、結成から93年の再結成までアルバム、ライブごとに記され、各機材の紹介。どの曲のどのパートに使用されていたかまでフォローされています。
続いては案の定松武秀樹さんのインタビュー。ここでは、「なぜモーグのシンセは太いと言われるのか」という永遠の謎に対する氏の分析が必見。
そして驚くべきは、YMOの仕掛け人・元アルファレコード社長にして名コンポーザー村井邦彦さんへのロングインタビュー。これ、キーマガですよ。レココレじゃありませんよ。
アルファが誇る当時最新鋭のスタジオA、はたまたアメリカの名門レーベルA&Mを巻き込んでのYMO戦略の秘密や、最近「ライディーン」を真剣に聴いてみたという、ざっくばらんなお人柄も見えてくる良き取材。
さらに『BGM』以降に本格的なキャリアをスタートさせた飯尾芳史さん、藤井丈司さんの元テッキーズによるインタビューは、克明なサウンドメイク術のみならず、若手ゆえの新鮮な日々が滲みわたる素晴らしい内容です。
藤井さんが初春に出版されるという『YMOのONGAKU』(仮)なる著書も楽しみです。
- アーティスト: 立花ハジメ
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- 発売日: 1990/09/21
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ちなみに、後半の12ページは、過去のキーマガからYMO関連の3記事が再掲されております。
当時の記憶では、ブームが落ち着いてからの『テクノデリック』『浮気なぼくら』について、そのレコーディングを追った資料が少ない印象もあり、個人的には楽しめました。
文体やレイアウトなどに「80年代ってこうだったよね(白目)感」も漂いますけども、それもまあ良しかと。
しかし、今回の特集で何より感心したのは、この特集のほぼ全編で執筆・構成された布施雄一郎さんの力量です。
シンセをはじめとする電子楽器や録音機材に対する知識も深く、すれっからしの好事家も納得の内容だと思います。
前回の特集と合わせて単行本出してもいいんじゃないですかね。
Keyboard magazine (キーボード マガジン) 2018年10月号 AUTUMN (CD付) [雑誌]
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Keyboard magazine (キーボード マガジン) 2019年1月号 WINTER (CD付) [雑誌]
- 作者: キーボード・マガジン編集部
- 出版社/メーカー: リットーミュージック
- 発売日: 2018/12/10
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ちなみに付属CDには、読者からのYMOオマージュな楽曲を収録。「ファンがYMOを目指すとOMYになる」という定理が脳裏をよぎりつつも、なかなか楽しめました。
ちょうどTORAIZ AS-1でProphetサウンドの再現に興じているタイミングだったこともあり、ややテンション高めでご紹介しました。
monologue活用法〜AS-1のアレを覗く
我が家で「またそんなもの買って」と話題沸騰のTORAIZ AS-1ですが、その前に買ったハードシンセは、KORGのモノフォニックシンセ、monologueでした。
もう2年近く前なんですけどね。
久々に読み返して、monologueもこないだのAS-1も、4年前のRoland TB-3やmonotribeやvolcaシリーズも、僕は楽器店で購入してることに気づきました。
CD、PCなんかは専ら通販ですけど、シンセだけは現物を見ないと買えないんですね。
SYSTEM-1に至っては、酒を飲んだ勢いで買ってますし。
それはさておき、今回はあることを思いついたので、このmonologueとAS-1を繋いでみます。
AS-1のオーディオアウトをmonologueのオーディオインに繋ぎます。
で、ヘッドフォンはmonologue側をモニターします。
monologue側では以下のセッティングにします。
GLOBALメニューで音源をイニシャライズし、MIXERセクションのOSC1とOSC2のノブを左に回して0にします。
そのままシーケンサーで任意のキーを16ステップ分タイで入力します。そしてシーケンサーを作動させておきます。
一方、AS-1のセッティング。
こちらもGLOBALメニューからイニシャライズ。
OSC1のSHAPEをTri(三角波)にしておきます。
VOLUMEノブを正午の辺りにセットし、HOLDボタンを点灯させて適当なキーをひとつだけ鳴らします。
すると…
monologueのオシロスコープ画面に三角の波形が浮かびます。
そうです。AS-1の波形を見てやろうという話です。
双方のセッティングを初期化したのは、どちらもフィルター周りを全開にして、素の波形を見るためであります。
また今回はmonologueのゲートも開きっぱなしにするため、シーケンサーを作動させたんですが、余裕があれば鍵盤を押し続けるだけでも構いません。
AS-1のオシレーターの特徴は、三角波〜ノコギリ波〜パルス波の連続可変。
SHAPEをVALUEノブで徐々に右へ回していくと、音が鋭くなりながら、波形が徐々にSaw(ノコギリ波)へ近づきます。
実はこの波形、monologue本体で鳴らすノコギリ波と向きが逆なんですな。
AS-1のように時間とともに上昇して急降下するのが、本来のノコギリ波とのことです。どちらでも聴感上の違いはないそうですが。
そしてこのままVALUEノブを右へ回し続けるとPulseに近づきます。
ちなみにPW(PULSE WIDTH)の値は、イニシャライズにより127、つまり矩形波となっています。
SHAPEが行き着いたところ。
ありゃ、随分歪んだ矩形波ですな。モデルとなったProphet-6がどういう波形かはわかりませんが、モノシンセとしてエッジを効かせる目的があるのか…
こちらのPioneer開発者インタビューでは、DSI(Dave Smith Instruments、現SEQUENTIAL)の開発者とオシロスコープで波形を見ながらチューニングした、との証言もあるので、あえてこの波形を作ったことが想像されます。
動画も撮りました。
三角波からノコギリ波を経て矩形波へ行って(往路)、また三角波方面に戻しています(復路)。
往路では回し方に緩急がつき過ぎたようで、変化が急激なところもありますが、その分復路はゆっくりとノブを弄ってるのでまあ大目に見ろってくれぐれも。
AS-1の自作音をアップ。ついでにケースについて。
AS-1を買って10日ほど経ってしまいました。
ポリモジュレーション的なことをやろうとしたり、ついついOSC2をSYNCさせてしまううち、ひとつの音を作るのに、あーでもないこーでもないと、20分も30分も費やしてしまうんだよなぁ。
ということで、ひとまず聴かせられるレベルかな、という音を動画(静止画プラス音声)にしてみました。
イニシャルから音を作っていくなんて、4年前に買ったRoland SYSTEM-1以来か。
あちらは全部のパラメーターがノブとスライダーに出てるんで、感覚的にはちょっと違うんだけども。
プリセットから部分的に弄っていくのもいいんですけど、なんかいちいち初期化してしまうんですな。
それにしても、AS-1を弄っていると「この音をポリで弾きてぇな」とか思っちゃって、それはすなわちProphet-6が欲しくなるということに他ならず、「ちょっと待て」ともうひとりの自分がビンタしてくるんですよ。
デイヴ・スミス御大の思うツボじゃないですかね、これは。
それはさておき。
AS-1の専用ケースが欲しいなと思っていて、来月の小遣いで買おうかなと考えておりましたが、残念ながら、国内では取り扱ってないんですよ。
RolandのAIRAシリーズもそうですが、日本のメーカーなのに純正オプション品が買えないというのは、なんとかならんもんですかなぁ。
海外通販はトラブると面倒なんで、なんか適当なバッグでもさがそうかなと思っていた次第です。
で、こないだAS-1のオーディオインターフェイス用にRCAピンのコードを探すため、ベッドの下を覗いたら、20年近く前に買っていたゼロハリバートンがあったんですね。
どうしてこんなものを買っていたのか。
当時、NTTドコモのシグマリオンというPDAを持ってまして、これがゼロハリとコラボしたデザインだったんですよ。
出典:PC WATCH
それだけの理由で調子に乗って、一番小さくて安いの(と言っても4、5万円した)を買ったんですけどね。
確か限定生産で、現行商品でいうところのカメラケースくらいのサイズなんだけど、内部の仕様がPCケースに近く、実際のところ用途がよくわからない。
A4より小さいので書類を入れるのに向かないし、そもそも普段使いにはゴツすぎる。
結局買ったはいいが、シグマリオンから他のPDAに乗り換えた後は、ケーブルを仕舞うくらいしか使い道がなかったんですよ。
ん、もしかしてAS-1入るんじゃね?
うはっ、スッポリ収まった。
ベルトで固定してみっか。
うわーっ、ジャストフィットじゃない。
おまけに蓋の裏のポケットにAC一式入るじゃない。
閉めてみるか。
本体の向きを間違えなければ、アームで傷つくこともない。奇跡的であります。
ということで、これをケースとすることにしました。
よかった、20年前の投資が無駄に終わらなくて。
これで何処へでも持って行けます。