シンセ界にも脱昭和を。
書店でこんな本を見つけたので買ってみました。
先週発売されたばかりのため、KORGから復刻されたARP ODYSSEYや、アナログ1系統を装備したRoland JD-Xiといった新商品が巻頭で取り上げられています。
内容は、ここ数年で発売されたアナログシンセの導入法を中心に、音作りはもちろん、同期のさせ方やDAWでの録り方、またシンセイベントの心得まで書かれていて、ビギナーや「最近シンセはご無沙汰だなぁ」という御仁にも楽しめる一冊かと思います。
またモジュラーシンセにもしっかり誌面が割かれており、マニアも満足できるでしょう。
往年のシンセ教本のような「音の3要素講座」ではなく、ArturiaのMIniBruteやKORG MS-20 miniといった実機セッティングから各パラメータの機能説明を加える「理屈じゃねーんだよ」な実践スタイルは新鮮です。
タイトル通り、21世紀におけるアナログシンセの楽しみ方と言えるでしょう。
著者である大須賀淳さんのお名前に見覚えがあったので思い返すと、以前僕の担当番組に出演されたシンセメーカーREONの荒川伸さんをメインとしたドキュメンタリー映画『ナニワのシンセ界』を撮られた方でした。
もう少し長く担当番組が続いていれば、お声掛けしたいと思っていたわけですが(むにゃむにゃ)、プロフィールによれば大須賀さんは1975年生まれ。
クラブシーンにおいてTR-808やTB-303が再評価されて以降アナログシンセに触れた世代のようです。
そのせいかと思いますが、決してデジタルを貶すことなく、アナログならではの楽しみ方を書いていることに好感が持てました。
巻末の対談における「もうアナログでもデジタルでもどっちでもいい」との発言にもある通り、アナログシンセを見映えが良くいい音の鳴る楽器のひとつと捉えてらっしゃるようです。
このジャンルでは「◯◯が愛用していた名機」という文脈を抜けきれず、◯◯への思い入れたっぷりの大きなお友だちのみに支えられている感が強かったんですね。
正直なところ、僕はキース・エ◯ーソンは一枚も聴いたことないですし(汗)
しかし、ここへきてようやく「脱昭和」が訪れたのかなと思います。
大手楽器店では数万円クラスを中心としたコーナーが出来るほど、多くのシンセサイザーが発売されている昨今です。
「マニア向け」から脱して、こうした書籍がたくさん並び、僕の子どもたちが楽器店に集う時代が再び来るといいな、と真剣に願っている次第ですハイ。