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sh101's blog

シンセとラジオの40数年。

計算機がシンセだった頃。

最初に手に入れたシンセがRoland SH-101だった、という話を何度か書いてきたんだけど、最近「あ、違ってたわゴメン」と思い出したことが。

中学校への入学祝いとして買ってもらったのがコレなんですわ、ということで動画リンク借用。


カシオのVL-10という計算機兼電子楽器でした。
巷ではVL-1(通称VL-TONE)の方がよく知られていますが、こちらはその廉価版というか、同じ機能を小型化したものです。
動画を観ていただいてもわかるように相当小さいです。
タイトルも和訳すると「世界でいちばん小さなシンセサイザー‼︎!」ですからなにしろ。
いま例えるなら、標準的な地デジリモコンくらいのサイズかと思われます。

僕が親にVL-10を買ってもらったのは1982年の春頃で、しかも場所は近所の文具店でした。
おそらく世界で初めて文房具とともに販売されたシンセサイザーでしょう。
すでに初代機VL-1は店頭から消え、後継機VL-5とともにショーケースに並んでいたのが、このVL-10だったんです。

そもそもカシオは既に80年から「カシオトーン」というブランドを展開してたんですが、81年から82年にかけて発売されたVLシリーズは、主力商品の計算機を強引にカシオトーンへ寄せた奇跡の楽器群でした。
実はカシオトーンに先立つ79年、カシオはメロディを奏でられる電卓MLシリーズを出しているので、もしかするとこちらにはその開発チームが関わっているのかもしれません。

いずれにせよこのボタン型の鍵盤、当然電卓として使うことを前提に作られているわけですが、記憶では計算機能を使ったことがございません。
しかし、数値入力と演奏をハイブリッドにナニした衝撃は大きく、近年ではTeenageEngineeringの高級チープシンセOP-1がフォロワーとして知られておりますが、83年に登場したRoland MC-202にも影響を与えたのでは?と勝手に推理しております。

プリセットにはピアノ、フルート、バイオリン、ファンタジー(なんやねん)など、チープにも程がある凛として愛らしい数種類の音色が並びます。
もちろんリズムも10種類プログラムされており、ルンバからビギンまで、ありとあらゆるダンスミュージックに対応しております。
後にリズム界を蹂躙するPCM音源とは程遠い独特の電子音は、後にサンプリングCDとして復刻されるほど通好みのクオリティでした。

特に惹きつけられたのが「シンセサイザー機能」。
これは後継機VL-5では消えてしまった(ゆえにVL-10を選んだ)機能です。
元になる音色を選び、そこにビブラートやADSR、つまりエンベロープなどを入力すると、ふわっと始まるピアノやら、ガクブルするフルートやら、すぱっと切れるファンタジー(なんやねん)やら、未知のサウンドを創造できるわけです。

このプログラム手順がなかなか壮絶でして、左から音色→アタック→ディケイ→サスティンレベル→サスティンタイム→リリース→ビブラート→トレモロと、8ケタの数字を打ち込んでいくわけです。
例えば「アタックがちょいと緩めですぱっと切れながら、ビブラートがブルッブルに震えてるピアノ(音色No.0)欲しいよね」と思ったら「02533090」とメモリーするわけですよ。
なんだこれは。

いやこれでもね、当時はビンビンに興奮したんですよ。
シンセサイザーとは何ぞや」がまるで理解できてない、地方都市在住の厨房でしたから。

さらに100音のシーケンサーも内臓されており、あらかじめ音程のみ入れておいて、右上のボタンをタップして演奏するワンキーボード機能も搭載。
リズム感の悪い方は肝を冷やすこと請け合いですが、実はこれも前述のMC-202がタップ入力として踏襲しています。

いま思えば、数値による音色作成、LCD液晶搭載など、後のデジタルシンセを彷彿とさせるスペックも多く、「デジタルはカシオ」の看板に偽りなし、と感嘆させられます。
カシオは数年後PD音源を武器に本格的なシンセサイザー開発に取り組むわけですが、なにせ事業部の多い会社だそうですので、このVL-TONEの技術がどこまで継承されているか不明です。

ちなみに僕のVL-10、あまりに小さいため学校へ持って行って友人に見せびらかしていたんですが、半年ほどして教室で盗難に遭ってしまいました。
まぁ自業自得なんですけど、もしいま状態のよいものであれば、ぜひとも購入したい、会社に持って行って同僚に見せびらかしたいグッズ第1位でございます。