sh101's blog

ちょっとお小遣いを貯めればなんとかなるシンセを語る日々

minimoogがiPhoneにまでやってきた。

これを知らなきゃシンセを語るな、とまで好事家が叫ぶシンセがあります。
それがミニモーグでございます。

これぞ本物のシンセ、という表現もされてました。まあ電子音に本物も偽物もないと思うんですが、兎にも角にもこれを知ってないとシンセは語っちゃまずいそうです。ああ、良かった知ってて。持ってないけど。

確かに昨今販売されている製品を鳴らしてみても、モーグのシンセは別格と言う他ないほど太い音がします。本物かどうかはさておき、音がデブ、それだけは確かです。

つい最近まで生産されていたミニモーグは、日本円にして40万円前後の価格がついていたのです。
僕が小学生の頃読んだ『シンセサイザーに首ったけ』という書籍に載っていた、1981年当時の価格とさほど変わってません。

1970年に生まれ間もなく50年。回路的には進化しているものの、パネルレイアウトはほぼそのまま、というクラシックにも程があるシンセで、好事家の心の拠り所なのです。

時代は移り「ソフトシンセ」という、なんだか洒落た豆腐みたいなフニャフニャのPC世代においても、その太いサウンドの再現はひとつの憧れであったようです。

現在はハードシンセメーカーとしても知られるArturiaは、かつてミニモーグのPC用プラグイン"Minimoog-V"を生産していて人気を博しました。
2012年7月にmoogのライセンスが切れる寸前に、無料ダウンロードを敢行した挙げ句、名前を"Mini-V"と変えて販売継続したことで話題となりました。

もうお前らには「ミニ」で通じるだろ、と言わんばかりの明快さです。クルマの世界じゃ「クーパー」でしょうが、その手の好事家はミニと言えば「モーグ」なのであります。

そして2013年、そのMini-VをベースにiPad向けアプリとしてリリースしたのが"iMini"でした。

こちらはアスペクト比的にもなかなかにミニモーグっております。
実機を持ってないので、確認のしようがないんですけども、iPadに突っ込んで「これがモーグの音かぁ」なんて思いながら弾いておりました。
実機とこのアプリを弾き比べて「オー似テル似テル」とか言ってる海外のレビュー動画も観ました。

やがて僕のiPadが娘のようつべ再生専用機と化したので、iMiniもiPhoneでも使えるようユニバーサル化してくんねぇかな、と思っていたところ、ついに本家モーグ様がユニバーサルアプリをリリースされました。

その名も"Minimoog Model D App"。

こちらはiPadの画面。iMiniとどちらがお好みでしょうか。

しかし、本家本元は、その名を略さないものです。前田慶次はやはり前田慶次郎利益でなければならないのです。

実はモーグiOSにアプリをリリースしたのはこれが初めてではなく、2011年に"Filtatron"というフィルターモジュールをシミュレートしたアプリ、さらにベクトルシンセの新種ともいえる"Animoog"を発売します。

Filtatron

Filtatron

  • Moog Music Inc.
  • ミュージック
  • ¥600
Animoog for iPhone

Animoog for iPhone

  • Moog Music Inc.
  • ミュージック
  • ¥600

この後モーグiOSアプリはしばらく途絶えるわけですが、一昨年突如リリースされたのがモジュラーシンセ"Model 15"でした。

Model 15

Model 15

  • Moog Music Inc.
  • ミュージック
  • ¥3,600

ルックスから本気のモジュラーかと思ったんですが、弾くというよりは鳴らすのが目的のようで、プリセットの趣向もRolandAIRAから出たPLUG-PUTシンセ"SYSTEM-100"に限りなく近い、綺麗なシーケンスの流れる箱的な印象でした。

そして今回登場したのが、まさに全世界の好事家が待ちに待った"Minimoog Model D App"なのであります。

iPhoneで見ると、画面の1/4近くがメニューで覆われています。

ここで上部の[PLAY]ボタンを押すと、上部の圧迫感が薄まります。

表示領域が広がったのに、なぜか左端のController群が消えてしまうのはご愛嬌。

しつこいようですが実機を持ってないのでかなり適当に書きますけれども、この"Minimoog Model D App"、なかなか太いサウンドをお持ちです。

まあ本家本元の商品ですし、過去の名機があらかたDAWプラグインで蘇り尽くした2018年ですので、パラメータの挙動とサウンドは実機のそれだろうという仮説のもとご紹介すると、大きく異なるのは4ポリフォニック仕様となっている点。

これはプラグイン音源ではもはや当たり前で、iOSにおいてもKORGが先行して復刻したARP ODYSSEiもポリ仕様でした。

ここで気になるのは、ただでさえ存在感の強いMinimoogの音で和声を鳴らしたら聴くに耐えないものにならないのかしらん?ということ。
いろいろ試した結論としては、フィルター全開の音はやっぱり煩いかなと。少なくともアタックタイム0での和声は、立ち過ぎな感じもします。
この点を逆手にとれば、逆に存在感のあるパッド系は作りやすいと思います。

そしてアルペジエイター、ディレイといった、もう実機に付けといても何の問題もないFX群には、"BENDER"というパラメータがあります。
これは鍵盤左のピッチホイールとは違い、あくまでエフェクトの一種で、VCAを出た後にさらに個別のLFOを通してサウンドに厚みや不気味なエフェクトを付けられるもので、使用感としては効果の極端なコーラスというところでしょうか。

個人的にハマった機能は"LOOPER"。
適当にプログラムを切り替えながらアルペジエイターを鳴らしてみるとミニマル・ミュージックが一丁あがり。パフォーマンスにはもってこいでしょう。

ちなみにFXは全部で4種類。それぞれが、古い事務机の引き出しのようになっていて、全部出すとフロントパネルに覆い被さってしまうのがちょっと面白いです。