sh101's blog

ちょっとお小遣いを貯めればなんとかなるシンセを語る日々

『見て楽しむ アナログ・シンセ図鑑』読書感想文

ピエール瀧逮捕という今年最大の衝撃に突き動かされ、街を徘徊していたら書店でこんな本を見つけました。

シンコーミュージック・エンタテイメント刊で税抜き1,800円也。

奥付を見ると発行日が2018年6月10日とありました。
つまり発刊以来10ヶ月もの間、その存在に気づかなかったわけで、読者諸兄がご存知の中で僕だけが知らなかったという、背中に「バカ」と書かれた中学生状態かもしれません。

とは言え、なかなか面白い本ゆえ、僕並みに情弱な方がいらっしゃれば、なんとか救いにならないだろうか、早く背中に「バカ」と書かれているのを知らせられないものかと思い、筆を執る次第であります。

この本、松武秀樹さんと難波弘之さんという、過去にお仕事させていただいたおふたりの対談からスタート。

ちなみに難波さんが担当番組に持ち込まれたコルグ700Sには、コルグの工場で行ったという改造が施されていました。

そして松武さんといえばあのMOOGⅢc。
この名機から1987年まで製造されていたSEQUENTIAL CIRCUITSのMulti-Trakまで、アナログシンセ(プラスα)が50機種紹介されています。

なお掲載順は巻頭のMOOGⅢcを除き、アルファベット順でメーカーごと、製造年順に各1〜8機種となっています。

どの機種の画像も大判で、パネルのフォントもしっかり読み取れるほど高精細。
解説文に書かれた特徴あるパラメータの位置もわかり「あー、鳴らしてみてぇ」と唸ること必至です。

ただほとんどの機種に傷ひとつなく、色褪せも見られない美品状態で撮影されているんですが、発売から40年前後も経た金属&樹脂製品の保存状態がここまで良いはずはないと思われ、それなりのフォトショ美人になっているのが推測されます。

「もしも、こんな新品シンセに出会ったら…」というドリフ大爆笑でも叶えられそうにない夢を実現してくれる点で、ありがたい配慮とも言えます。

機種の選定はちょっと独特です。
例えばローランドの項目では、おそらく所有者も多かったであろうSHシリーズはわずかにSH-3のみ。個人的にはレイアウトが絶妙なSH-1を見たかったところです。

ヤマハは初号機SY-1をはじめ、CS-10以降のラインナップを追いつつも、なぜかモンスターマシンとして名高いCS-80がありません。
ただ学校教育用に作られたというSY20の画像には驚きました。パネルに表記された丸ゴシック体のカナ文字はかなり斬新です。

一方コルグは前述の700SからPolySixまでの流れをわりと丁寧に追ってる印象。
同様にモーグやシーケンシャル・サーキットも代表機種はほぼ網羅されています。

個人的に驚いたのは、MOOG The Sourceが、あのMinimoogの後継機だった、という記述。
学生時代(90年前後)何度か実機を見かけたんですが、あの妙にポップな色使いやボロボロになったフィルムスイッチを敬遠して、音を出したことがなかったんですよ。
まさかフルアナログだったとは。

そしてシーケンシャル・サーキット唯一のモノシンセPro-One。いま僕が夢中なAS-1の年上のはとこのような存在で、Prophet-5譲りのパラメータ群に目が釘付けです。

過去のシンセをWeb検索してもサイズが小さくて、どんなパラメータがあるのか知る由がなかったという貴兄におススメです。よかったらぜひ。