三社三様。
【7/12追記】
タイトルを変更しました。すいませんベタで。
45歳以上(推定)の好事家にとって最も大きな関心事は「この21世紀にアナログシンセをどうやって復活させるのか」の一点に絞られていたように思うんですね、唐突ですが。
そもそもアナログ機への回帰が始まったのは、2008年にKORGから発売されたDS-10というゲームソフトでした。
- 出版社/メーカー: AQインタラクティブ
- 発売日: 2008/07/24
- メディア: Video Game
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またこれに先んじて同社のLegacy CollectionでもMS-20が発売されていましたが、こちらは好事家とは微妙に守備範囲が異なるDTMerの間で密かに珍重されていた向きもあり、リリース本数では圧倒的にDS-10の方が上回っていたそうです。
このDS-10の凄さは、バーチャルだからこそMS-10を安価に、しかも1万円台で買えるゲーム機において復刻できたことに尽きます。
かつてアナログシンセに親しんでいた人はもちろん、高価なアナログ機、もしくはモデリング機に手を出せなかった人を中心に支持されたようです。
この頃は好事家も物分かりがよく、アナログによるアナログ好事家のためのアナログ機が世に出るなど、誰も想像していませんでした。
そして2010年に発売されたリアルアナログ・ガジェットmonotronからmonotribeを経て、まさかまさかの新製品が生まれたわけです。
いやホント、このMS-20 miniの登場には唖然としました。
担当番組で特集した際に触らせていただいたり、開発スタッフの皆さんにもお話を聞けたんですが、最新の部品をかき集めた上、サイズを小さくして再開発する発想は、あまりにも斬新過ぎました。
そこで好事家には「KORGに出来たんだからお前もやれー」とTogetherさせちゃうルー大柴のごときプレッシャーを他メーカーに向ける者も現れ、それはそれは誠にお気の毒様と言わざるを得ない状況でした。
フランスのソフトウェアメーカーであるArturiaがMINIBRUTEなる鍵盤付きアナログマシンを発売したことも影響したんでしょう。
そんなところへRolandが放ったのがSYSTEM-1でした。
アナログ機をアナログのまま再現したKORGと対照的に、アナログ機の回路をデジタル技術(ACBテクノロジー)で再構築するというコンセプトのマシンです。
ヴィンテージ機の高騰を横目に、過去の技術で商売しないRolandらしさ全開の、甚だバカ正直な商品だと思った次第です。
創業者様のご尊顔から「そのまま作ったらお仕置きだベぇ」というフレーズが飛び出してこようというものです。
ただ、そのACBテクノロジーを用いて、同じマシンに過去の名機を再現する"PLUG-OUT"は見事な発想でした。
SH-101のソフトウェアをまんまSH-101の筐体に載せるという愚業へ走らなかったところに心意気を感じました。
また初期のSHシリーズを彷彿とさせるパネルに電飾満載のイマドキ感を付加したのも「うちのは再現じゃなくリファインだす!」との主張が垣間見られます。
そして数日前、長らく沈黙を保っていたYAMAHAが"Reface"なる新シリーズで、久々にCSの冠を引っ張り出してきました。
SYSTEM-1同様アナログモデリングなのはさておき、カラーリングはアタックもニュービーズも真っ青になる驚きの白さ、さらに往年のCSシリーズで多用されたノブスイッチから一面スライダーへの宗旨替えなど、「テーマは過去との訣別、ですか?」と問いただしたくなるイメチェン感。
同シリーズのDXが見事なまでのDXっぷりを見せているのとは対照的です。
スピーカーまで付いているので、これはCS全体というよりCS01に特化したリファインかもしれませんが、この動画におけるスライダーの弄り方を見ると、新しい楽器を作っちゃったという感覚だと思います。
もし露店でRefineシリーズがこんな感じで売られてたら、このおじさんの熱さに負けて即買いしそうですハイ。
ところでSYSTEM-1とRefaceシリーズ双方の開発者インタビューでは「アナログで作る気はなかったのか?」と同じ質問が飛んでおり、この疑問が好事家最大の関心事であったことを象徴しております。
過去のアナログ機をベースに作られた廉価シンセですが、三大メーカーそれぞれのアプローチが明確に差別化されているところが素晴らしいな、と思った次第です。