sh101's blog

ちょっとお小遣いを貯めればなんとかなるシンセを語る日々

MC-101との初夜が明けて…

そんなわけで、前回のあらすじを簡単にまとめると「MC-101と寝ちまうぞこのヤロー」でした。

今回は実際に寝ながら鳴らしてみた印象を、ダラダラと書き殴っていきましょう。


❶音がいい

唐突に書きましたが、これは本当です。

ただし、アナログガーと言う方には早めにご退室いただいた方がよかろうと存じます。

例えば僕が所有するTORAIZ AS-1と並べて、MC-101のトラックのどれかひとつを鳴らして「どちらがお好みですか?」と尋ねたら、街角の奥様の多くが、低音から高音まで芯のあるAS-1の方を選ぶでしょう。

しかし忘れてはならないのは、MC-101では複数のトラックを重ねて使用することです。

AS-1は単体で聴けば本当に素晴らしいサウンドですが、これだけでトラックを組み立てていくと、あまりの音圧に引き算を始めなければならなくなります。
映画でも主役クラスが何人も出ると、監督としてはたいてい苦労するものです。

この点、MC-101の音は総じてバイプレイヤーズです。
昨年亡くなられた大杉漣さんや松重豊さんのように主演を務めることもありますが、集結によって作品に生まれる安定感はただならぬものがあります。

MC-707なら漁船に乗った菅原文太さんが「時代はパーシャル!」と叫ぶほどに重厚なサウンドを作り出すこともできますが、101は端的に言って「ちょうどいいサウンド」です。

まさか101をMIDIピアノに繋いで、ピアノ波形だけで「もしもピアノが弾けたなら」を歌う猛者はいないと思いますが、リズムやベースを混ぜた時のバランスの良さ、オールラウンドぶりは見事だと思います。

思えば、半世紀前に界隈を席巻したあの「M1 PIANO」も、「もしもピアノが弾けたなら」を歌うにはあまりにも不甲斐ないサウンドでした。
しかしTB-303のグライドやTR-909のグラウンド・ビートと合わせて初めて「ハウスと言えば」の代名詞を冠したわけです。

PCMだから、アナログだから、VAだからと判断する人は可哀想だなと、高いところから失礼します。

つかですね、3,000もあってWAVファイル放り込み放題では、毎日オーディションを続けてもクランクインできないのであります。

❷犠牲になった操作性

もうね、「習うより慣れろ」という言葉がこれだけ相応しい機種もなかなかありません。
たかがトラックの小節数ひとつ変えるにも、リファレンスPDFを取り込んだiPhoneが欠かせないほど、ボタンのコンボ技が多いのですよ。

入力もなかなかに大変です。
DRUMトラックはともかく、TONEでのステップレコーディングでは、一音ずつSEQとNOTEの切り替えを伴う重労働に苛まれ、いま何ステップ目のどの音階を入力中なのか記憶が途絶え、路頭に迷うこと間違いなしです。

無論、入力するたびにステップが自動的に進む「ステップ・インプット・モード」、あるいはver1.20から追加されたメトロノームに合わせ、パッドのリアルタイム入力といった他の入力法もあります。

ただし、このパッドも早いフレーズを弾くには辛いクッション性があるので、MIDIキーボードが不可欠かと思います。

専ら枕元で使う僕にとって、止む無しと言えるところではありますが…アルペジエイターがあれば、また印象が違ったのかと。

❸それでも広がる夢想

4トラックというところに限界を見ている人も多いでしょう。

しかしLOOPERトラックには、MIXOUTが録音できるのです。
録音が済んだら、消去した3トラックに別のTONEで別のフレーズを入力すれば、これで6トラック分の音になります。
これで足りなければ、さらにLOOPERトラックを増やして録音すればいいのです。

そぉ。これ、MTRにおけるピンポン録音と同じ。
特定の世代には「わかるわかる」というヤツです。

今やDAWでどこまでも作り込める時代ですが、MC-101の低価格ゆえに生まれた制約は、知恵でなんとかなるんではないかと思います。
UNDOこそできませんが、都度PROJECTを残しておけば、LOOPERトラックを作る前に遡れますし、まあスペックだけで可能性を軽視するのはもったいないハナシです。

❹SCATTER最高

AIRA最大の売りであるSCATTERですが、本機の場合、すべての欠点を補って余りある功績を果たしてくれます。

わかりやすく言えば「オレの陳腐なフレーズをスクエアプッシャー様がリミックスしてくださった!」とまあ、そんな感じ。
クリップ1個作れたら、もうSCATTERだけでお腹いっぱいになりますし、飽きたら自分で効果をエディットできますし。

それと、DRUMトラックにおけるMTEが素晴らしい。
MTEは発音される確率を設定するパラメータで、打ち込んだ一音に対して数値を50とすると、50パーセントの確率で鳴ったり鳴らなかったりします。
これが特定パートの特定ステップごとに設定できるんですな。

延々とループさせることが前提の本機の場合、フレーズに不確定要素を加えられるというのは頼もしい限り。特にドラムンベース系の裏拍で、SUB(サブステップ)と併用すると抜群に面白いです。

ちなみにハードウェアでは、今年発売されたKORGのvolca drumにも同様の機能があります。今後のマスト機能になるかもしれません。

ひとまず、MC-101との初夜を乗り越えた感想をお伝えしました。