二〇一九年の鳴らし初め
昨年はお世話になりました。
今年もお世話になります。
元日は生放送のために仕事始めとなったのですが、本日からまたしばらく年始休みとなりまして、心機一転、書き初めならぬ鳴らし初めを執り行いました。
こちらは単にAS-1のデモ6音分のシーケンスをBPM130にして重ねただけでございますけども、特にコンプをかけなくてもそれなりに音圧があって、どの音も埋もれないというのは流石であります。
一夜明けて、こちらは1980年頃の坂本教授っぽい音を作って4音重ねました。まあかなり「HAPPY END」に寄せましたが。
鐘のような音は専らLFOによるモジュレーションを使い、エフェクトのリングモジュレーターは使用してません。
どこかで読んだんですけど、Prophet系のモジュレーションはかなりデリケートで、かかるかかかってないか位のところで絶妙な変化が起こるそうで、AS-1でも同じ印象でした。
逆にパラメーターを極端に上げると、まるで使えない音が生まれてしまい、昨今の「どうセッティングしてもそれなりの音になる」アナログとはかなり違うもんだなぁと。
ドラムは1音でバス、スネア、ハットを鳴らしてます。音源はOSCは使わず、LPFの自己発振をLFOモジュレーションで加工、仕上げにレートを最高にしたBBDエフェクトを振りかけると、『B-2UNIT』感満載のドラムの出来上がり。
何はともあれ、こんな感じで1音決めるのに30分くらいかけるほどにダラダラと過ごしておりますが、自分も含めて皆さま、本年も良い一年でありますように(取ってつけた感 )。
キーマガのYMO機材特集がすごい。
軽く立ち読みするつもりが「やばい、これは完全保存版だわ」と、レジへ向かうワタクシ。
今月発売のKeyboard magazine(2019冬号)の話です。
先日もリマスタリング・ベスト盤『NEUE TANZ』の話題をしましたけど、今年は(今日で終わるけどさ)YMO結成40周年なのです。
そこで前号(2018秋号)に続きYMO特集が組まれたわけですが、今回はこんな駄目ブログを読まれるような方には感涙必至の機材徹底検証です。
YMOの使用機材については、これまでも『大人の科学マガジン シンセクロニクル』などで部分的に触れられていましたが、今回のキーマガさんからは、バラエティ番組に娘と出演するアニマル浜口さんのごとき気合いが、ひしひしと伝わってまいります。
なんと65ページもの大ボリュームで、YMOチルドレン御一行様には垂涎モノです。
まず機材の変遷が、結成から93年の再結成までアルバム、ライブごとに記され、各機材の紹介。どの曲のどのパートに使用されていたかまでフォローされています。
続いては案の定松武秀樹さんのインタビュー。ここでは、「なぜモーグのシンセは太いと言われるのか」という永遠の謎に対する氏の分析が必見。
そして驚くべきは、YMOの仕掛け人・元アルファレコード社長にして名コンポーザー村井邦彦さんへのロングインタビュー。これ、キーマガですよ。レココレじゃありませんよ。
アルファが誇る当時最新鋭のスタジオA、はたまたアメリカの名門レーベルA&Mを巻き込んでのYMO戦略の秘密や、最近「ライディーン」を真剣に聴いてみたという、ざっくばらんなお人柄も見えてくる良き取材。
さらに『BGM』以降に本格的なキャリアをスタートさせた飯尾芳史さん、藤井丈司さんの元テッキーズによるインタビューは、克明なサウンドメイク術のみならず、若手ゆえの新鮮な日々が滲みわたる素晴らしい内容です。
藤井さんが初春に出版されるという『YMOのONGAKU』(仮)なる著書も楽しみです。
- アーティスト: 立花ハジメ
- 出版社/メーカー: ミディ
- 発売日: 1990/09/21
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ちなみに、後半の12ページは、過去のキーマガからYMO関連の3記事が再掲されております。
当時の記憶では、ブームが落ち着いてからの『テクノデリック』『浮気なぼくら』について、そのレコーディングを追った資料が少ない印象もあり、個人的には楽しめました。
文体やレイアウトなどに「80年代ってこうだったよね(白目)感」も漂いますけども、それもまあ良しかと。
しかし、今回の特集で何より感心したのは、この特集のほぼ全編で執筆・構成された布施雄一郎さんの力量です。
シンセをはじめとする電子楽器や録音機材に対する知識も深く、すれっからしの好事家も納得の内容だと思います。
前回の特集と合わせて単行本出してもいいんじゃないですかね。
Keyboard magazine (キーボード マガジン) 2018年10月号 AUTUMN (CD付) [雑誌]
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Keyboard magazine (キーボード マガジン) 2019年1月号 WINTER (CD付) [雑誌]
- 作者: キーボード・マガジン編集部
- 出版社/メーカー: リットーミュージック
- 発売日: 2018/12/10
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ちなみに付属CDには、読者からのYMOオマージュな楽曲を収録。「ファンがYMOを目指すとOMYになる」という定理が脳裏をよぎりつつも、なかなか楽しめました。
ちょうどTORAIZ AS-1でProphetサウンドの再現に興じているタイミングだったこともあり、ややテンション高めでご紹介しました。
monologue活用法〜AS-1のアレを覗く
我が家で「またそんなもの買って」と話題沸騰のTORAIZ AS-1ですが、その前に買ったハードシンセは、KORGのモノフォニックシンセ、monologueでした。
もう2年近く前なんですけどね。
久々に読み返して、monologueもこないだのAS-1も、4年前のRoland TB-3やmonotribeやvolcaシリーズも、僕は楽器店で購入してることに気づきました。
CD、PCなんかは専ら通販ですけど、シンセだけは現物を見ないと買えないんですね。
SYSTEM-1に至っては、酒を飲んだ勢いで買ってますし。
それはさておき、今回はあることを思いついたので、このmonologueとAS-1を繋いでみます。
AS-1のオーディオアウトをmonologueのオーディオインに繋ぎます。
で、ヘッドフォンはmonologue側をモニターします。
monologue側では以下のセッティングにします。
GLOBALメニューで音源をイニシャライズし、MIXERセクションのOSC1とOSC2のノブを左に回して0にします。
そのままシーケンサーで任意のキーを16ステップ分タイで入力します。そしてシーケンサーを作動させておきます。
一方、AS-1のセッティング。
こちらもGLOBALメニューからイニシャライズ。
OSC1のSHAPEをTri(三角波)にしておきます。
VOLUMEノブを正午の辺りにセットし、HOLDボタンを点灯させて適当なキーをひとつだけ鳴らします。
すると…
monologueのオシロスコープ画面に三角の波形が浮かびます。
そうです。AS-1の波形を見てやろうという話です。
双方のセッティングを初期化したのは、どちらもフィルター周りを全開にして、素の波形を見るためであります。
また今回はmonologueのゲートも開きっぱなしにするため、シーケンサーを作動させたんですが、余裕があれば鍵盤を押し続けるだけでも構いません。
AS-1のオシレーターの特徴は、三角波〜ノコギリ波〜パルス波の連続可変。
SHAPEをVALUEノブで徐々に右へ回していくと、音が鋭くなりながら、波形が徐々にSaw(ノコギリ波)へ近づきます。
実はこの波形、monologue本体で鳴らすノコギリ波と向きが逆なんですな。
AS-1のように時間とともに上昇して急降下するのが、本来のノコギリ波とのことです。どちらでも聴感上の違いはないそうですが。
そしてこのままVALUEノブを右へ回し続けるとPulseに近づきます。
ちなみにPW(PULSE WIDTH)の値は、イニシャライズにより127、つまり矩形波となっています。
SHAPEが行き着いたところ。
ありゃ、随分歪んだ矩形波ですな。モデルとなったProphet-6がどういう波形かはわかりませんが、モノシンセとしてエッジを効かせる目的があるのか…
こちらのPioneer開発者インタビューでは、DSI(Dave Smith Instruments、現SEQUENTIAL)の開発者とオシロスコープで波形を見ながらチューニングした、との証言もあるので、あえてこの波形を作ったことが想像されます。
動画も撮りました。
三角波からノコギリ波を経て矩形波へ行って(往路)、また三角波方面に戻しています(復路)。
往路では回し方に緩急がつき過ぎたようで、変化が急激なところもありますが、その分復路はゆっくりとノブを弄ってるのでまあ大目に見ろってくれぐれも。
AS-1の自作音をアップ。ついでにケースについて。
AS-1を買って10日ほど経ってしまいました。
ポリモジュレーション的なことをやろうとしたり、ついついOSC2をSYNCさせてしまううち、ひとつの音を作るのに、あーでもないこーでもないと、20分も30分も費やしてしまうんだよなぁ。
ということで、ひとまず聴かせられるレベルかな、という音を動画(静止画プラス音声)にしてみました。
イニシャルから音を作っていくなんて、4年前に買ったRoland SYSTEM-1以来か。
あちらは全部のパラメーターがノブとスライダーに出てるんで、感覚的にはちょっと違うんだけども。
プリセットから部分的に弄っていくのもいいんですけど、なんかいちいち初期化してしまうんですな。
それにしても、AS-1を弄っていると「この音をポリで弾きてぇな」とか思っちゃって、それはすなわちProphet-6が欲しくなるということに他ならず、「ちょっと待て」ともうひとりの自分がビンタしてくるんですよ。
デイヴ・スミス御大の思うツボじゃないですかね、これは。
それはさておき。
AS-1の専用ケースが欲しいなと思っていて、来月の小遣いで買おうかなと考えておりましたが、残念ながら、国内では取り扱ってないんですよ。
RolandのAIRAシリーズもそうですが、日本のメーカーなのに純正オプション品が買えないというのは、なんとかならんもんですかなぁ。
海外通販はトラブると面倒なんで、なんか適当なバッグでもさがそうかなと思っていた次第です。
で、こないだAS-1のオーディオインターフェイス用にRCAピンのコードを探すため、ベッドの下を覗いたら、20年近く前に買っていたゼロハリバートンがあったんですね。
どうしてこんなものを買っていたのか。
当時、NTTドコモのシグマリオンというPDAを持ってまして、これがゼロハリとコラボしたデザインだったんですよ。
出典:PC WATCH
それだけの理由で調子に乗って、一番小さくて安いの(と言っても4、5万円した)を買ったんですけどね。
確か限定生産で、現行商品でいうところのカメラケースくらいのサイズなんだけど、内部の仕様がPCケースに近く、実際のところ用途がよくわからない。
A4より小さいので書類を入れるのに向かないし、そもそも普段使いにはゴツすぎる。
結局買ったはいいが、シグマリオンから他のPDAに乗り換えた後は、ケーブルを仕舞うくらいしか使い道がなかったんですよ。
ん、もしかしてAS-1入るんじゃね?
うはっ、スッポリ収まった。
ベルトで固定してみっか。
うわーっ、ジャストフィットじゃない。
おまけに蓋の裏のポケットにAC一式入るじゃない。
閉めてみるか。
本体の向きを間違えなければ、アームで傷つくこともない。奇跡的であります。
ということで、これをケースとすることにしました。
よかった、20年前の投資が無駄に終わらなくて。
これで何処へでも持って行けます。
TORAIZ AS-1のパラメーターについて❷
前々々回と前々回と前回に続き、Pioneer DJ TORAIZ AS-1についてです。
ようやく仕事が落ち着いて没入してるんでこの話題が続くのは仕方ないだろ、というわけで、今回もパラメーターについてです。
最も思い通りにならないけど、バシッと決まった時はもう快感、という[MODULATION]セクションから。
後述のLFOとは別に、FILTER ENVとOSC2を使って変調するのがこのセクションです。
Prophet-6ではポリモジュレーション(POLY MOD)という名称ですが、AS-1においても同じ機能です。
前に書きましたけど、「ポリモジュレーション」はLFOのみで行う「モノモジュレーション」の対義語で、音源の発音数とは関係ないという認識でした。
しかし『Sound & Recording Magagine』(つまりはサンレコ)2017年6月号のAS-1特集において、開発の方が「AS-1はモノシンセなので正確にはポリモジュレーションと呼べない」と発言されているので、どうやら僕の誤認だったようですね。
それなら本家シーケンシャル・サーキットのモノシンセPro-One(Prophet-5のモノ版)における呼称が"MODULATION"だったことにも合点がいきます。
詳しくはこちらで(丸投げ)。
閑話休題。
ここでは変調できるターゲットがOSC1のFREQ(ピッチ)、SHAPE(波形)、そしてPW(PULSE WIDTH)となっており、例えばフィルター・エンベロープでSHAPEを三角波からノコギリ波方面へ緩やかに変調することもできます。
またOSC2の"KEY FOLLOW"をオフ設定することで、変調の周期を"FREQUENCY"に設定した周波数に固定出来ます。つまりOSC1に対してLFOでの設定と速度や波形が異なるビブラートやPWMがかけられる、というわけです。
ちなみにOSC2の"LOW FREQ"をオンにすると、LFOの周期がOSC2の周波数に左右されます。
ま、これだけウダウダ書き連ねてもわかりにくいと思うので、ひとまず私からは「レッツ・トライ」の一言でまとめさせていただきます。
こちらはLFOです。
シンセを齧った経験をお持ちの方は、歯茎からの出血とともに理解されてるでしょうが、周期はテンポとシンクロできます。
"FREQUENCY" は4/4で8小節から32分三連符までの18種からと、かなりきめ細かに選べます。
ターゲットは[MODULATION]セクションに比べて多く、OSC2のピッチ、アンプ、フィルターに対しても変調できます。
それと"FREQUENCY"の値を最速、"SHAPE"を"Random"にすると、ノイズモジュレーションがかかります。これをフィルターにかけると、バリバリのノイズに変わりますのでお試しを。
アルペジエイターやシーケンサー、スライダーの機能は触ればわかる安心設計のため記載を割愛します。
とにかくAS-1が素晴らしいシンセサイザーであることは間違いないんですが、そこは当ブログ、オール手放しで褒めちぎりません。
最後にひとつだけ、謎仕様について書いておきます。
それはこの[GLIDE]、つまりポルタメントに関する2つの問題。
AS-1では、通常のポルタメントかけっぱなし以外に、レガート演奏に対してのみグライド効果をかけることができ、レイト/タイム固定で4種類から選べます。
ところが、内蔵シーケンサーでスラー(前の音とトリガーを連結させる)をオン、かつグライド効果をかけると、音程がちょっと怪しくなるんですね。
いろいろフレーズを試したところ、スラーの際ピッチに何らかの処理がされていること、そして内蔵シーケンサーではGLIDEの設定が全音に対してかかってしまうのだと推察されます。DAWなど外部のシーケンスでは解決できそうですが。
もうひとつ、フィルターを自己発振させたサイン波にGLIDEの設定が追従しないこと。これはシーケンスのみならず、手弾きでも同様でした。
サイン波を作る時は、口笛やテルミン風な奏法をイメージすることも多いので、わりと残念なウィークポイントなんですよ。
僕が見落としている設定があるのか、回路構成の問題なのか、よくわかりません。
誰か教えろ、いや教えてくださいお願いします。
TORAIZ AS-1のパラメーターについて❶
さてさて、前回の記事でも書いた、TORAIZ AS-1とSEQUENTIAL Prophet-6のパラメーターが完全に一致、という件の続きです。
その前に、AS-1のサウンドエディター・アプリについてですが、メーカーのPioneerではなくSoundTowerというサードパーティからリリースされています。
このサイト、90年代のHTMLな煤けた薫りというか、阿部寛のホームページ的なノスタルジーが漂ってるんですが、ひとまず安心しても良さそうてす。まあPioneerさん公式のお導きですから。
で、3種類のアプリのうち"TORAIZ AS-1 Sound Editor LE"は無料で落とせます。
このアプリのキャプチャとProphet-6のパネル比較画像を眺めながら、まずはオシレーター周りから、機能や特徴を紹介します。
廉価シンセですらオシレーターシンク可能な2OSC仕様になってきた昨今、AS-1で特に注目いただきたいパラメーターが"SHAPE"(Prophetのパネルの方がわかりやすいかと)。
ノブを左に振り切ると三角波、センターがノコギリ波、右に振り切ればパルス波へと連続可変していきます(本体表記はTri-Saw-Pulse)。
他のシンセでは、波形を選択し別のノブで変化させるタイプも増えていますが、3つの波形をシームレスに繋げるというのはmoogの影響でしょうか?
次の回で触れますが、このSHAPEは(ポリ)モジュレーションのターゲットとなっているため、時間経過とともに波形がモーフィングするサウンドも作れます。
ちなみにパルス波は、その右隣の"PULSE WIDTH"の値が127だと矩形波となり、最小値0と最大値255になるとパルス幅が0%となるため無音となります。
そしてLFOのモジュレーションソースにもなるOSC2は、鍵盤に追従しないよう設定可能です。
こんな動画(静止画と音声)をアップしました。
前半20秒はOSC2をC1に固定したもの、後半20秒は前半のセッティングにLFOで2分音符刻みの矩形波モジュレーションをかけたものです。
僕にあと少し脳味噌と時間があれば、もっとかっちょ良いコード進行も作れたんですが。
さて「オートチューニングだか何か知らねぇが、最近のアナログシンセは安定し過ぎて面白みに欠けらぁな」とお嘆きの貴兄に嬉しいのが、ピッチに不安定さを加える[SLOP]セクション。
ほどほどにかければヴィンテージな揺らぎに、目一杯かければ失笑してしまうほどの音痴に調教できます。
[MIXER]セクションには、OSC1、OSC2のレベルはもちろん、OSC1の1オクターブ下の三角波を出す"SUB LEVEL"、ホワイトノイズを追加する"NOISE"があります。
AS-1のフィルターは自己発振可能なので、純粋にサイン波が欲しい時は、このパラメーターを全て0にしておきましょう。
また"SUB"の存在感は格別で、安いヘッドフォンでもズーンと響く低音を楽しめます。
一方ホワイトノイズは、少量混ぜてフィルターを開け閉めするとプロフェット風味がお口いっぱいに広がります。
続いては公式でも「Prophet-6と完全に同じ」と謳っているフィルターのご紹介です。
AS-1には自己発振可能なLPFとHPFの2基があり"CUTOFF"はもちろん、"RESONANCE"と"ENV AMOUNT"も独立して搭載されています。
10万円以下の価格帯では1基でLPF/BPF/HPFの切り替え式、HPFがあっても"CUTOFF"のみという機種も多いので、結構レアかと思います。
LPFはキレが良く、カットオフを相当絞っても、波形の美味しいところだけをしっかり残してくれる印象。
HPFの殺傷能力は極めて高く「わー、ローが全部消えちゃった!」と慌てふためくほどです。レゾナンスは、ただ上げてるだけでは効果が不明瞭ですが、LFOモジュレーションとの組み合わせで絶大な効力を発揮します。
なおフィルターのキーフォローは、それぞれオフ/Half/Fullの3択です。
エンベロープはフィルター用とアンプ用の2基搭載。
AS-1本体のノブでは"ATTACK"、そして"DECAY"および"RELEASE"の一括コントロール(フィルター/アンプ双方に作用)しかできないので、音作りではこちらの設定をお忘れなく。
とりあえず今回は気力が尽きたのでここまで。
ちなみに本体だけでも、PARAMノブとVALUEノブで全てのパラメーターが弄れますので念のため。
TORAIZ AS-1とProphet-6を較べてみた。
引き続きPioneer DJ TORAIZ AS-1の話題。今回はサウンドについて、ちょいと具体的に書きます。
この動画でもわかるように、AS-1はDave Smith Instruments社が2015年に発売した6ボイスのポリシンセProphet-6をベースに開発されたモノフォニック・シンセです。
まあ、どう見てもルックスの違う両者ではありますが。
AS-1ではノブの数を最小限に絞ってあるため、細かなエディットで階層を掘っていく必要があるのは前記事にある通り。
で、最初はKORG MS-20と同社のmonotronのように「フィルター回路が同じ」だけの関係なのかな、と思ってたわけです。
実際「AS-1のフィルターはProphet-6と同じもの」との記事がいくつもありましたし。
ところが取説を片手に階層を掘ったところ、初めて目にする"SLOP"なんてセクションがあるわ、HPFにはノブに出てないレゾナンスがあるわで、「ちょっと奥さん、これどういうこと!?」と声を荒げそうになってしまいました。
そこでパラメータの全貌を知るため、AS-1用サウンドエディターをPCに入れてみました。
http://www.soundtower.com/toraiz/
その画面キャプチャーと、Prophet-6のフロントパネル画像を部分的に比較してみた図がこちら。
細かくてすいませんねぇ。
左列がAS-1、右列がProphet-6で、上からOSCILLATOR、FILTER、ENVELOPE、MODULATION、EFFECT、LFO、ARPEGGIATOR&SEQUENCERの各セクションを並べております。
驚きました…ほぼ同じやんけ。
AS-1のEFFECTにリバーブがないなどの細かい差異はあるけれども、それ以外はまったく同じパラメータが並んでおります。
しかもセンターが±0となるノブまで同じ。
こちらの記事によれば、Pioneerさん曰く「Prophet-6をある程度ベースにしつつ、艶っぽい音はそのままにさらにエッジのたったようなサウンドに仕上げています」とのことですが、いや、まさか構成がパラメータレベルで同じとは…
つまるところ、モノシンセとして音が立つよう、なおかつ部品がコスト的に調整されているということでしょう。価格差が大きいですから、なにしろ。
もうちょっと僕がお金持ちなら、両者の出音をオシロスコープに通して「いやあ、ここは似てますなあ」などと腕組みする自撮り動画をアップしたいところですが、残念ながらそれは無理です。
それにしても、Prophetシリーズの伝統である「ポリモジュレーション」まで受け継がれているのはすごい。
この場合の「ポリ」とは発音数を指すんじゃなく、モジュレーションソースがLFOのみならず、FILTERエンベロープやOSC2でもOSC1やフィルターを複雑に変調できるってことね。
こんな貧乏臭い書き方はしたくないんですけど、わずか5、6万円で本家Prophetの音作り(同じ音とは言ってない)が楽しめると考えればとんでもないことですよ、ええ。
だからAS-1側でも"POLY-MOD"と表記すればいいと思うんだけど、特許だの商標だのというアレですかね。
と思って、本家シーケンシャル・サーキット社から出ていたPro-One(Prophet-5のモノ版)を画像検索したら、こちらも"MODULATION"でしたね、うーむ。
ということで、まだまだAS-1ネタは続きます。