sh101's blog

ちょっとお小遣いを貯めればなんとかなるシンセを語る日々

MC-101買っちゃったよこのヤロー 

まあ、前回こんな投稿をしちゃってるので、フラグ感満点なのですが、まあつまりその、買っちゃったわけですよ、Roland MC-101。

このブログにおける機材バナシは、二次会に誘われた時の「行けたら行くわ」的な気分で「買えれば買うわ」と書くことも多々ありますが、何かの弾みで本当に買ってしまうこともままあります。

今回は足掛け3ヶ月「あー、早く終わってくれよチキショー」と気が滅入っていたイベントが無事盛況に終わり、「やっと終わったぜチクショー」と、名古屋パルコの島村G器さんに向かったのであります。

確か去年そんなイベントを終えてTORAIZ AS-1を買ったのも、同じS村楽器さんでしたな。

他の機種についての投稿でも書き散らしてますが、枕元に置けて寝ながら使え、しかも乾電池で駆動してくれるところが最大の選定基準。

KORGのmonotribeやvolcaシリーズは、まさにそのニーズに応えてくれましたが、やっぱり複数パートをできるだけコンパクトに鳴らせないものかと欲が出ます。
MC-101は、そんな僕の夢のマシンなのであります。

こんな性癖に堕ちたのも、35年近く前に買ったMC-202のせいなんでしょう。
受験勉強もそっちのけ、ベッドでうつ伏せになりながら枕元のMC-202を打ち込んでいたバカなんですよボカァ。

せっかくなので、バッテリー駆動MC親子の記念撮影。

202の子が101という不思議。円谷英二さんのご長男も円谷一さんですからね、何しろ。
いや、円谷英二さんの本名が英一なのは知ってるからそこは突っ込むなよ。

繰り返しますが、ワタクシの場合は寝ながら使えることが重要なのです。

仕事で疲弊してんのに、休みの日まで背筋を伸ばして曲作りなんて、あまりにも酷です。
だったら曲作りなんかするなと言われてもやっぱり酷です。
別に僕はDJイベントに参加しないんで、寝ながらでいいんです。

さらに「この機材でこんな曲を作ろう」とか「こんなシステムを組もう」などとも考えていません。
寝ながら作業した報い、もとい結果として「こんな曲ができてしまった」という方が実は楽しかったりするのです。

なので、今回はセットアップなど。

ちなみについ先日、1.20へのアップデートが公開されましたので、マニュアルに沿って無事終了。

USBバスパワーなので、ケーブルさえあればスマホ用の充電式モバイルバッテリーでも動いてくれます。
新幹線予約で、窓際の(コンセントのある)席を選んだり、出張先のホテルでも夜遊びせず、ベッドから出ないままになることが俄然増えそうです。

TORAIZ AS-1用に買ったLightning-USBタイプBのケーブルがあったので、MC-101をストレージモードにしてiPhoneと繋いでみました。

するとファイルアプリに[MC-101]のフォルダが。

掘り下げていくと、PCで見る時と同じく[PROJECT]と[SAMPLE]のフォルダがあったので、iCloudに入れていたTORAIZ AS-1のプリセット音をコピーしてみました。

さらに、AIRA Microsite(AIRA Microsite | Roland)で公開されているプロジェクトを、iPhoneでダウンロードし、そのまま[PROJECT]フォルダへ移動させると、しっかり反映してくれました。

こりゃPC要らないね。

というところで、後は寝て鳴らすだけです。
今日はここまで。

物欲-2019冬-

さてさて、楽器系カテゴリーでは久々の投稿になってしまいました。
近況としては、大学の講義でTHEREMINI弾いたりとか、そこそこ満喫していたんですけども。

この間、いろんな製品情報が出るたびにこの駄文ブログにはアクセスが急増し、そして「今回もこいつはスルーか」と失望させ、波が徐々に小さくなっていく、そんな近況でございました。
もう誰も見てないだろうけどさ。

「ちょっとお小遣いを貯めればなんとかなるシンセを語る日々」なんてサブタイトルを付けている拙ブログですが、思えばコレがガンだったのか、と初めて痛感したこの秋。
つまりは、いちいち追っかけてられないほど、このサブタイに適したガジェットなりアプリが多発したわけです。

まず9月にRolandから衝撃的なニュースが飛び込んでまいりました。

これまでAIRAを筆頭に単体ハードを量産し、好事家ターゲットなのかDJ御用達なのか、よくわからないラインナップを展開していたRoland

しかしようやくここへ来て、それらの集大成的なグルーヴボックスを発売しました。

そう、グルーヴボックスなんですよ結局のところ。

この数年の紆余曲折は、ここへ至るまでの実験だったわけですね。
わざわざ過去の名機群をVAで出してアナログ原理主義者のこめかみをピクピクさせていたのも、極小スライダーやナノクラスのノブで中高年クラスタの指先を震わせたBoutiqueシリーズを展開してきたのも、この新商品への踏み台に過ぎなかったのです。

グルーヴボックスであればアナログだのバーチャルだのクソ喰らえ。Rolandが出戻っても盛大に歓迎される第二の故郷なのです。
これはもう凱旋だパレードだ、ビバAIRA

MC-707という上位機種も同時発売ですが値段が倍。論外。
そんな事情から、このブログ的にはMC-101の方を推す他ありますまい。

4トラックながら3,000を超える音源を揃え、さらにSDカード経由で手持ちのWAVファイルをインポートでき、マルチエフェクト各種がトラックごとに装備された上、マスターにはコンプもEQも付いて、税抜き5万円切っちゃうのです。

何よりも「単三電池4本で稼動」というところが、実にわかってらっしゃる。
デジタルはカシオ、電池駆動はKORG、という日本古来のキャッチフレーズが、本機の登場により一新される勢いです。

厚みはMC-707と同じですが、縦横がおよそ半分になっているせいで、ほんのりKORG monotribeを思わせる弁当箱風情。

ふと目を閉じれば、公園のベンチに腰掛けた井之頭五郎さんが「こういうのでいいんだよ」と言いながらパッドを叩く姿が浮かんでくるじゃありませんか皆さん。

そして各トラックに付いたフェーダー。ミュートボタンなんて野暮なものはついておりません。光の速さでオンオフするプレイの所作がもう漢らしい。

膨大な音源も階層を掘れば、フィルターやエンベロープなど、ベーシックな音いじりも可能です(モジュレーション系はビブラートのみですが)。

"ZEN-Core"なるネーミングの音源部には、なんとTR-808TR-909TB-303、JUNO-106、SH-101のサウンドが網羅されているというじゃありませんか。
これはまごうことなきAIRAの魂を受け継ぐ勇者です。

正直に言えば、SH-2やPROMARSあたりも欲しいところではありますが、改めてAIRA初期メンバーが並ぶ様は壮観であります。

ハッキリとは銘打たれていませんが、おそらくBoutique以降サンプルレートを44.1kHzとしたACB音源とPCM音源とを、同じパラメータで変化できるようにしたのがZEN-Coreなのかな、と邪推します。

http://www.vintagesynth.com/sites/default/files/2017-05/roland_mc303.jpg

グルーヴボックスと言えば忘れちゃいけないのが、1996年発売のご先祖MC-303。
こちらはPCMで448波形でしたが、これとAKAIのS2800だけでCDアルバム1枚作ってしまうほど、アドレナリンをドバドバ分泌させられた名器であります。

そう考えるとMC-101の3,000超というトーン数は大容量時代の恩恵です。
そしてMC-707と比べトラック数とクリップ数が半分ながら、音源的にはまるで同じというところが素晴らしいと思います。

DX7に手が届かず泣く泣く買ったDX9が、蓋を開けたら4オペレーター/8アルゴリズムでさらに号泣したという先達の残留思念も、ここへ来てようやく浮かばれるのではないでしょうか。

さてその直後、Rolandさんはこんな爆弾も落としてきました。

KORGの独壇場だったiOSアプリ界に降臨されたのです。
奇しくもなのか意図的なのか、こちらのアプリ名にも"ZEN"の3文字。何かの略なのか、ジャパンのメーカーだから「禅」なのかよくわかりませんが。

そしてこちらにもTR系のサウンドが含まれておりまして、数日前のMC-101/707爆弾に脳がやられていた人々は、ついつい「これでMC-707体験できるんじゃね?」とインストールしたことでしょう。
そしてアンロックにすべく課金してしまったのではないでしょうか。ワタクシもやっちゃいました。

しかし、見やすいUIの反面、アイコンの意味がよくわからない。一回入力していたフレーズが止まり、もう一度再生してみたら消えていた、なんて困ったことが続いておりました。
ツイッターで検索してみると、アラフィフを中心に悲嘆に暮れるご同輩が多発していた模様です。

こうした声に「やれやれジジィは」と思われてしまったのか、こちらをはじめ、マニュアルを書かれる親切なユーザーさんもおられ、最近ようやく慣れてきたところです。ありがたや。

まあ、この辺りのフラストレーションをハードにぶつけようかというこの頃であります。

他にも紹介したいハードもあったんですが、オッチャンゆえチカラ尽きました。今日はひとまずこんなところで。

パール兄弟とつボイノリオと私(追記あり)

11/6に名古屋今池のライブハウスTOKUZOにて、二人パール兄弟サエキけんぞう&窪田晴男)のライブがありました。

学生時代、パール兄弟や、ご著書を通じてサエキけんぞうさんを師と仰いでいたワタクシ。
特に名盤レビューなどをまとめた『ヌードなオニオン』(河出書房新社刊)からは、音楽のみならず物事を斜めに見る楽しみを学びました。

なんやかんやで20年ほど経ち、すっかり中年となったワタクシは、職場のスタジオでサエキさんに出会ったのです。
ファンぶりを知っていたディレクター女史によって、つボイノリオさんの番組にゲスト出演されたサエキさんに挨拶させていただく機会を得た次第です。

実はサエキさん、僕がインタビューと構成、注釈等々を担当した書籍『つボイ正伝』(扶桑社刊)を読んでくださっていました。

つボイ正伝 「金太の大冒険」の大冒険

つボイ正伝 「金太の大冒険」の大冒険

職場にはライター業などやるセクションもルールもないのですが、先輩のアナウンサーで出版されている方も多く、前例から「書いてよし」という流れで生まれた書籍です。

プロアマの違いはあれど、つボイ研究をフィールドとする師弟としてお付き合いいただくことになりました。

その後、東京支社スタジオでプロデュースしたラジオ番組にも数回ご出演いただいたこともあります。

4年前にTOKUZOでつボイさんを招いてライブを行ったサエキさん、今回はなんと窪田晴男さんとの「二人パール兄弟」で、つボイさんが特別ゲスト。

サエキさんから直接お誘いいただき「これ以上の俺得がどこにあるんだ」ということで足を運ばせていただいた次第です。

金太の大冒険」という必殺のロングセラーを持つつボイさんですが、2006年からiTunesで4つの新作(新録音)を発表しています。
実はこれらの曲、つボイさんから見てシモネタ耐性が強く近場で安く使えるワタクシがアレンジをさせていただいてます。
当ブログ的なことを言うと、ほぼ全て(カオシレーターを除き)KORGTRITONで作りました。

その中で、最も話題となったのがこの曲。

勇者マンコ・カパックが、部族同士の戦いを制してインカ帝国を成立し、初代の王となるまでを描く、7分超の大作であります。世界でも珍しい、音楽版RPGとも言えましょう。

つボイさんの「あのぉ、ペルー音楽みたいなアレンジで行きたいんですよ」のひと言で、慌てて身重の妻にフォルクローレのオムニバス(2枚組で1,000円)を買ってきてもらい、気に入った楽曲をいくつか聴き込んで構成を組み立て、なんとかそれらしく仕上げました。

iTunesが日本でサービスを開始しておよそ1年後の2006年9月、妻の臨月にリリースされたこの曲は、ワールドミュージックのカテゴリーで1ヶ月連続のデイリー首位となりました。

吉田松陰物語」以来30年ぶりの、つボイノリオ・アカデミック路線、そしてマンコへの想像を絶するバイオレンス描写、マンコの男気、壮絶な戦いから国を興し「王マンコ」として慕われるまでの人生が大きな話題となりました。

さらに13年後のこの日、アレンジの師として一方的に勝手に尊敬していた窪田晴男さんの素晴らしい演奏によって、ワタクシの書いたイントロのメロディが再び蘇ったのでした。

高校時代から学生時代を支えてくれたパール兄弟と、一介のサラリーマンの自分にクリエイターとして機会を授けて下さったつボイノリオさん。
人生の大きなふたつの点がひとつに繋がった瞬間であります。
こんな幸せなことがあるでしょうか。

みんながひれ伏すマンコ 王マンコ
みんなが大好きマンコ 王マンコ

実はこの最後のフレーズ、つボイさんが締めに困っていたので、アイディアを出させていただきました。

その記憶を辿りながら、窪田さんたちの素晴らしい演奏を聴き終えると、あまりの感激に涙を流しておりました。

おそらくこの曲を聴いて感涙まで至ったのは、世界広しと言えど、ワタクシくらいのものでしょう。
長生きして良かった(50歳)。

改めて、お招きいただいたサエキけんぞうさんに感謝いたします。

(追記)
僕が「インカ帝国の成立」の性交成功で調子に乗り、当時の編成デスクに取り入って生まれて初めてディレクションした番組が、まだニコ動に残っていましたので、謹んで紹介いたします。

KORG Gadgetで「犬神家の一族 愛のバラード」

Toraiz AS-1だTHEREMINIだとニッチ・オブ・ニッチを驀進するワタクシですが、久々にみんな大好きKORG Gadgetでカヴァー曲を作りました。

今回のお題となった『犬神家の一族』(愛のバラード)は、僕がアレンジを志すきっかけとなった曲で、40数年来の憧れであります。

愛のバラード

愛のバラード

ダルシマーのオクターブ上で鳴っているシンセリードを除き全て生楽器。原曲はどう聴いても数十人規模のミュージシャンによる演奏です。

KORG M1に始まり、手に入れたPCMワークステーションで挑戦してきたんですが、パート数や発音数で挫折に次ぐ挫折。
今回は満を持してKORG Gadgetで再現しようというわけです。

KORG Gadgetは特にアコースティックの追加音源の出来がよく、最近のアップデートでは個々のトラックにエキサイターが使用できるようになりました。

これまで生っぽい編成の曲はKORG TRITONで作っていたんですが、今ではKORG GadgetとMIDIキーボード(今回はKORG microkey)さえあれば事足りてしまう状況です。

とは言え、今回はドラム2パート、ベース、アコギ、ピアノの他、リードで4トラック、ストリングスで4トラック、ブラス系で4トラックに加え、音切れ不可避のハープも重要な役割を果たしています。

ここまでパートが多いとiPhoneのパワーが追いつきません。10トラックを超える頃にはノイズ発生→無音→都度メモリ開放の悪戦苦闘に見舞われます。

そこでアレンジがある程度仕上がったところで、パートをリズム隊、リード、ストリングス、ブラスの4つに分けてプロジェクトを保存し、エクスポートしたWAVファイルをHarmonicdogのMultiTrack DAWで重ねることにしました。

MultiTrack DAW

MultiTrack DAW

  • Harmonicdog
  • ミュージック
  • ¥1,200

トータルコンプはMultiTrack DAW搭載のものを使用しました。

実はこの曲に取り組んだきっかけは、THEREMINI用にカラオケを作ろうとしたことでした。

MIDIカラオケ風になるのが嫌で、音に凝り始めたらフルコピーが目標になり、結局2週間かかってしまいました。

今回は夏休みの自由研究として、その成果をお知らせいたしました。

THEREMINIに隠し波形があった!

先日moog THEREMINIの音作りについて投稿しましたが、その後海外のフォーラムを読んでいたら驚くべき内容が…

上から8番目の書き込みで、Gary Honisさんという方が、自ら作成した音色ライブラリーを公開されているんですが、ここにさり気なく"all using the 12 hidden waveforms"とありました。

つまり、THEREMINIにはデフォルトの7波形以外に、12個の「隠し波形」があったんですよおおおお!!(©ターザン山本

Honisさんがライブラリーを公開しているページにその全貌が。

このページの2番目の項目"Listen to 12 Extra Waveforms"で、そのパッチが公開されています。
公式エディターで読み込んで、鼻息荒くTHEREMINで鳴らしてみます。

確かに、異なる波形が12個ありました。

どこに波形があるんだろうと思い、前述のHonisさんのページの下の方にある"Virtual MIDI Sliders"をダウンロード。

このアプリは、CCの各パラメーターをスライダーで操作できるもの。THEREMINIの取説によれば、波形選択はCC90にあります。
デフォルトの値は0のサイン波から、6のEtherwaveまでとなっています。どうやら7〜127の間に別の波形があるようです。

"Virtual MIDI Sliders"は随分プリミティブというか、古めかしいUIですが、Win10のPCでもしっかり動作しています。
そして、[file]メニューから同じHonisさんのページで配布されている"ThereminiCCSlider.vms"を読み込ませます。
すると、6番フェーダーに"Waveform"の文字が…

適当な音色をチョイスしておいたTHEREMINIとUSB接続&MIDI設定して、このフェーダーを弄ってみると、確かに7番以降にいろいろあったりなかったり。

まるでラジオのチューニングの様相ですが、CC90では7-9、13-18、21、26-27、43、51、60、73-74、86-89、93-97、101、103、108-109、112、124-127の値でデフォとは明らかに違う波形が確認できました。

個人的には18、86、87あたりがお気に入りです。

中にはボリュームが低すぎて使えそうもないものや、同じ波形も混ざってますが、とりあえず疑問は捨てて、本体に残しておきたいものをひとつチョイスしておきます。

ここからは、この波形を使った音色をTHEREMINI本体に記憶させる手順など。

まずその前に、アプリのフェーダー番号(Waveformだけなら"6")を右クリックして青色にします。
さらに2ページ目の8番フェーダー(Save Preset)の値を127にした上で、同じように右クリック→青色にしておきます。
これにより本体に記憶させたいパラメーターを選択しておきます。

ちなみにこのページ2には、純正エディターにはない、ノイズに関するパラメーターもあります。

そしてMIDIメニューから"Send Selected Controllers"を選びクリック。
この操作で音色が書き換えられてしまうので、前もって消しても問題ない音色を選んでおきましょう。

そして"Virtual MIDI Sliders"を終了し、公式エディターを立ち上げ、先ほど書き換えた音色を再度呼び出します。

なぜか波形名が"HOLLOW"など既成の波形名(場合によって空欄)になりますが、本体を鳴らして音色が変わってなければ無問題。
フィルターやエフェクト等を必要に応じて再設定して(Virtual MIDI Slidersでも変更可能)リネームの上セーブ。
これで作業完了です。

それにしても。

moogはどうしてこれらの波形を隠しているのか、と疑問が湧くんですが、「まあせっかく作っちゃったし、マニアが探しに来るかもしれないから置いとこうか」というサービスでしょうか?

それと"Virtual MIDI Sliders"でノイズ関連のパラメーターが弄れるのは大きな発見でした。
さらに音作りが楽しくなるのは間違いありません。

Gary Honisサン、ドモアリガト。
現場からは以上です。

THEREMINI テルミン・モード備忘録

当ブログからまったくシンセ系の話題が出なくなってお嘆きの貴兄に追い討ちをかけるように、またもmoogのTHEREMINIについてエントリーを投下する不幸をお許しください。

ぶっちゃけ、和洋問わずシンセ関連のサイトやツイッターアカウントは毎日チェックしてるんですけど、ネタにしたくなるような機種がないんですよ。
ま、その手のアレがナニな皆さんはしばしお待ちを。


実はわかってなかったテルミン・モード

さてTHEREMINIを購入して、その日のうちにファームウェアをアップデートしたのはいいんだけど、途中から追加された機能「テルミン・モード」については、いろいろ苦労させられた次第。

試した当初は「お、テルミンみたいじゃないか」と思ったわけですが、後日いじってみたら、アンテナのレンジがどんどん狭くなったり、ピッチの調整が効かなかったりと、改めてイチからキャリブレーションする羽目になったわけで。

そもそもこのモードは、日本語版どころか本国のマニュアル(PDF)にも未だ掲載されておらず、何をどう操作すべきかよくわかりません。

最新アップデートすら、もう4年近く前のことなので、動作が理解できずTHEREMINIがインテリア化してしまった方に、ささやかながら研究結果をお伝えできればという所存でございます。

テルミン・モードでできること

そもそもテルミン・モードとはなんぞや、というハナシですが、これまでEtherwaveなど従来のテルミンに慣れた人向けの機能です。

ノーマル状態のTHEREMINIでは、SETUPメニューで音程のレンジ(最低音と最高音)を設定できるんですが、困ったことにキャリブレーションで最低音・最高音の鳴るアンテナからの位置も別で設定しなければいけません。

「困ったことに」と書いたのは、この設定が別々になっているからです。

例えば重要な曲アタマのポジションが思ったところに来なかったり、鳴らしてみると指を伸ばしても変化幅が1オクターブ行かなかったりした場合、いちいちレンジをボタンをポチりながら微調整しないといけなかったのです。
これが従来のテルミン愛好家から「もぉ!設定が超メンドーぷんすか」と罵倒される原因でもありました。

このテルミン・モードでは、数はEtherwaveと同じなれど、まるで役割の違うノブのうち2つで、ピッチとボリュームの微調整ができるなど、使い勝手が格段に向上する機能が使用できます。

  • PITCH CORRECTIONノブの機能がピッチアンテナの調整に変わる。ゼロポイントを作るアレ、と言えばわかるでしょうか。
  • AMOUNTノブの機能がボリュームアンテナの調整に変わる。
  • SCALEボタンを押すと、ピッチの変化幅をオクターブ単位(1-7Oct.)で可変できる。
  • ROOTボタンを押すと、オシレーターのピッチを前後1オクターブ可変できる。

正しくキャリブレーションが行われていれば、ノブひとつでピッチ幅を調整できる、これは大きな改良です。

ちなみに最後のオクターブ可変機能は、Etherwave Proにしか搭載されていないもので、低音パートと高音パートの切り替えに超便利なんですが、ピッチ幅が大きく変わる場合があるのでご注意を。

まずはモードを設定

テルミン・モードはSETUPボタンを複数回押してADVANCED SETUPメニューを出し、EFFECTボタンでエディットに入ります。

上から3番目にTheremin Modeとあるので、ここをONにします。
エディットメニューから出たら、この画面になると思います。

通常の画面と何ら変わりません。
またこの状態でPITCH CORRECTIONノブを回しても、ピッチシフトが変わるだけ。
AMOUNTノブもディレイのミックスが変わるだけの平常運転です。

ここでSETUPボタンを押すと…

画面に(Pitch Volume)の表示が出ます。
これでテルミン・モードに入りました。
前述した4つの機能が、これで使えるようになります。

モード突入時の注意など

また、このモードで弾いていて「ディレイ増やしたい」「ピッチシフト入れたい」という時は、再度SETUPボタンを押せば通常モードに戻ります。
これがボクチンはわからなかったところ。混乱させられましたよワッハッハ。

テルミン・モードでのピッチ調整は、もともと設定してあるピッチレンジを変える役割がありますが、従来のテルミン同様、ゼロポイントからの反転(アンテナに近づくほどピッチが低くなる)現象が起こりますので、設定には要注意。

一方AMOUNTノブによるボリュームアンテナの調整は、左端のVOLUMEノブと合わせて行うことになると思いますが、THEREMINIはもともと変化幅が狭いので、正直微妙な感じです。
キャリブレーション時のボリュームアンテナ調整も見直した方が効果が上がるかもしれません。

ちなみにテルミン・モードONの時は、SETUPでの設定やキャリブレーションの入り方が変わります。
SETUPボタンを長押しすると、このような画面になります。

SETUPボタンとSCALEボタン、またはROOTボタンの同時押しで希望の機能に入れるのでご安心を。

とにかく使うと便利な機能ですが、SETUPボタンで通常モードと切り替わるというのがわからないと「何にも変わってないですやん」とぷんすか増大です。
使用上の注意をお読みの上、正しくご活用くださいませ。

テルミン史が激変?検証“Good Vibrations”


素朴な愚問

テルミンが使われた代表的な曲は?」という質問に、ビーチボーイズの”Good Vibrations”を挙げる向きも多いと思います。
ビーチボーイズが三度の飯並みに好きなボクチンも、そんな回答をしていたことがあります。

しかし、三度の飯以上にテルミンへ熱を入れてしまうと、ちょっとした疑問が湧いてくるのです。

「こんな綺麗な音色のテルミン、どこにあるんだ?」

この曲や、同時期に録音された”I Just Wasn’t Made For These Time”(『ペットサウンズ』収録)で聴かれるテルミンのような音は、限りなく正弦波や三角波に近い、丸い音色がします。

この曲が録音されたのは1966年頃。
その頃レフ・テルミン博士から特許を取得して作られたRCAテルミンは発売から30年経っており、それ以外ではシンセサイザーを手掛ける前の若きボブ・モーグ氏が作っていたようなテルミンしか流通していなかったはずです。

RCAテルミンはクララ・ロックモアさんの演奏でもわかるように、鋸歯状波(ノコギリ波)に近い音色で、ビーチボーイズのものとは全くの別物。
モーグ氏の製品については、YouTubeにアップされた音色を聴く限りRCA社製に近いように感じます。

じゃあ、あの音はいったい何だ?

何弾いてんのマイク・ラブ

ビーチボーイズが”Good Vibrations”を演奏している、1967〜68年頃と思われるスタジオライブ映像にそのヒントがあります。

曲を作った天才ブライアン・ウィルソンは、アルバム『SMiLE』崩壊による引きこもり状態のため欠席です。

それはさておき、サビのパートでは、普段楽器を持つことのないマイク・ラブが、指を左右にスライドさせながら謎の楽器を演奏しているのがわかります。

これが一般にテルミンによるものとされるフレーズであり、レコードの音色とも一致するのです。

この映像はバンドの自伝映画『アン・アメリカン・バンド』(1985)で観たのですが、後にテルミン説が出た時に「レコーディングでは違うのかな?」くらいにしか思わなかったのですが…

Electro-Thereminとは

いろいろ調べたら、この「エレクトロ・テルミン」なる楽器に辿り着きました。

開発したのは、トロンボーン奏者のポール・タナー氏。なんとグレン・ミラー・オーケストラに在籍していた経歴があります。

そもそも電子楽器であるテルミンに、なんでまた「エレクトロ」を重ねたのかは謎ですが、ひとまず概要を和訳してみました。

Electro-Thereminは、1950年代後半にトロンボーン奏者のPaul Tannerとアマチュアの発明者であるBob Whitsellによってテルミンの音をまねるために開発された電子楽器です。
この楽器はテルミンと似たトーンとポルタメントを備えていますが、コントロールカニズムが異なります。
木箱の中にピッチを制御するノブを持つ正弦波発生器が置かれ、ピッチノブは、箱の外側のスライダーにひもで取り付けられていました。
プレイヤーはスライダーを動かし、ボックスに描かれたマーキングの助けを借りてノブを希望の周波数に回します。

まあ、概ねGoogle翻訳なんですけども、なんとなくスライダーを動かすことで、正弦波のピッチを変化させる仕組みということはわかります。

この「エレクトロ・テルミン」は、1958年以降、テレビや映画のサントラを含む様々なレコーディングに多用されたようです。

モンド系の名盤として知られるこのアルバムでは、ジャケットにも堂々と”Paul Tanner Electro-Theremin”と記載されております。

Music for Heavenly Bodies

Music for Heavenly Bodies

RCAテルミン以降存在を忘れ去られたテルミンが、1950年代からスペースエイジ・バチェラー・パッド・ミュージックや映画の効果音などで脚光を浴びた、というのが界隈の定説ではあります。

しかし60年前後にリリースされた音源には、RCAとは似ても似つかない音色のものが多くあり、長らく疑問に思っていました。
それらがタナー氏の「エレクトロ・テルミン」によるものだった、とすれば合点がいきます。

テルミンと認めるか否か

”Good Vibrations”に話を戻すと、そして研究書として信頼の厚い『ザ・ビーチボーイズ・コンプリート』(VANDA刊)において、”Good Vibrations”の録音にテルミン奏者としてタナー氏が参加していたことが掲載されています。

このセッションでタナー氏が弾いたのが「エレクトロ・テルミン」であることに疑いの余地はないでしょう。

ザ・ビーチ・ボーイズ・コンプリート revised edition

ザ・ビーチ・ボーイズ・コンプリート revised edition

ポール・タナー氏と写る「エレクトロ・テルミン」と、マイク・ラブがスタジオライブで使っているものとは筐体の厚みが大きく異なります。

後者は現在のEtherwaveより遥かに薄く、オシレーターが入る余地すらなさそうですが、操作を見るに、これはリボンコントローラーの一種ではないかと思われます。

いずれにせよ、ビーチボーイズのレコーディングにおいて(誰もが認知できる形状の)テルミンが使用されなかったことは明確で、じゃあ映画『テルミン』でのブライアン出演はなんだったのかということには、この際目を瞑りましょう。

問題はひとつ。
音階の遷移がポルタメントであるものの、「エレクトロ・テルミン」は手で直接操作します。
アンテナと人体の間の静電容量をコントロールするわけではないこの楽器を、果たしてテルミンの一種と見てよいのか?
これは議論が大きく分かれそうな悪寒もします。

「エレクトロ・テルミン」を肯定すれば、テルミンの定義が大きく揺らぎます。アナログ音源をポルタメントで鳴らすのであれば、シンセサイザーも同類ですし、音作りを前提としない条件がつけば、スタイロフォンも含まれることになります。

一方でこれを否定してしまうと、楽器としてのテルミン史において、1950年代から80年代におけるほとんどの記述が(西洋におけるテルミン博士の存在同様に)失われる可能性もあるわけです。

エレクトロ・テルミンを使用した楽曲が、ジャンルとしてテルミン物に括られてしまっている以上、これを覆すには何十年もかかります。
きっと世界中のテルミンユーザーの中には、"Good Vibrations"をきっかけとした方も多いでしょうし、今もなお「あのフレーズはテルミンだ」と信じている方もいるでしょう。今さらなハナシではあります。

だったらもう、エレクトロ・テルミンもTHEREMINIも全部ひっくるめて全部テルミンにしといたらええやん、という、THEREMINIユーザーの自分的には我田引水な提唱ではあります。

Electro-Thereminのその後

時は流れ、ブライアン・ウィルソンはドラッグなどによる不健康な生活を脱し、1999年には自身最高のヒット曲”Good Vibrations”をライブ演奏するようにまで復活しました。

この動画の4:10あたりで演奏されているのは、”Tannerin”なる楽器。1999年、ブライアンのツアー用にトム・ポークという人物が「エレクトロ・テルミン」を模して開発したもので、タナー氏の名を織り込んだネーミングからもリスペクトが感じられます。
ただ、このライブなどで聴ける音色はややノコギリ波に近いようです。

それでは、タナー氏が作ったオリジナルの「エレクトロ・テルミン」はどうなったのか。

Wikipediaによれば、60年代後半に聴覚学の研究用に病院へ寄贈されたとのことです。一点モノだったんですね。
手放した理由については、シンセサイザーの登場でターナー氏自身がその役目を終えたと感じたから、とのこと。

60年代半ばにシンセサイザーの活躍の場を大学の研究室から音楽スタジオへ広げた最大の功労者が、誰あろうボブ・モーグ氏なのですから、なんとも皮肉な話ではありますな。