sh101's blog

ちょっとお小遣いを貯めればなんとかなるシンセを語る日々

シンセサイザーとしてのTHEREMINI

つい先日、moog待望のフルアナログ・ポリシンセMoog Oneの国内販売が決定し、発表された価格に国民総溜息だの、いろんなニュースはありますが…

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当ブログは「新機種情報ガイド」を銘打ってるわけでもないので、基本的にはワタクシの興味の強い順に記事を粛々と書いております。

今回もmoogとは言いつつも、残念ながら5年も前に販売された、しかも鍵盤付きシンセサイザーではないものについてまたもエントリーを続けます。
ミルコ・クロコップに「おまえは何を書いているのだ」と言われようと、興味が強いのだから仕方ありません。

まあ、だけどもだ、今回はシンセサイザーとしての側面から書くので「へぇ、こんなシンセがあるんだ」くらいには思ってもらえると思います。

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Moog Oneとは対極にある、同社製最安値ハードであるTHEREMINI

シンセマニアに伝わるように言えば、音源部にAnimoogのエンジンを積み、鍵盤の代わりにテルミンインターフェイスを採用したDSPシンセです。

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iOS専用シンセアプリであるAnimoog、X-Yパッドによるモジュレーションに注目が集まりましたが、その出音の良さも絶賛されておりました。

本機には、その特徴的なモジュレーションサウンドや、Etherwaveサウンドなど32音メモリーされています。
ただし、単体での音作りはできません。

その代わり、本体をPC(またはiPad)にUSB接続し、無償で配布される専用エディターを起動すれば、音作りはもちろん、音色のストックや入れ替えも可能です。

エディター側でパラメーターを弄れば、接続された本体にすぐ反映する辺り、僕の大好物であらせられるToraiz AS-1とも似ています。

構成は、アナログで言うところのVCO-VCF、プラスアルファです。

ウェーブフォームはサイン波、三角波、SuperSawという定番に加え、Animoog波形のバリエーションとなるBrightやHollow ※、さらにウェーブテーブル音源としてAnimoog1とEtherwaveが選べます。
この最後の2つについては、時間軸で波形を変化できる"SCAN"に対応しています。

※最初のバージョンではBrightはAnimoog2、HollowはAnimoog3という名でSCANにも対応していた模様。

フィルター部は、おなじみのCUTOFFとRESONANCE、そしていわゆる「キーフォロー」であるPITCH TRACKの3パラメーター。

ちなみに、THEREMINIのサウンドメイクにはエンベロープの概念がありません。
電源をオンにしたところからゲートが開きっぱなしであり、発音や音階の変化に応じてトリガーが出るわけではありません。そのためエンベロープがないのです。

では、RESONANCEはあるのにエンベロープなしに、シンセ特有の「ミヨッ」という音が出せるのか?
その設定がADVANCEDメニューにあります。

ボリュームアンテナの項目に"FILTER CUTOFF"というパラメーターがあります。これでプラスマイナスを設定すれば、左手の動きに応じてフィルターが開閉し、あの「ミヨッ」を鳴らすことができます。

シンセサイザーにおける「ミヨッ」はたいていエンベロープやベロシティに紐付けられ、一度音作りをしてしまうと、変化に要する時間が決まってしまいます。

一方、THEREMINIでは左手の動きでフィルターの開閉を行えるため、ゆっくり動かせば「ミイィィヨオオォォン」にすることもできます。
また手を動かす距離によって変化量もコントロールできます

ちなみに右手のピッチアンテナでも、RESONANCEの量をコントロールできます。つまり音が高く(低く)なるにつれてピークをコントロールできるわけです。
左手と併用して遊ぶのも一興かと。

鍵盤型のシンセでは真似のできないフィルター弄り、THEREMINIのみが可能な芸当ではないかと思います。

ちなみに、僕がAmazonでTHEREMINIを買ったのは今年の6/10で、その時点の価格は3万円台だったんですが、その直後から在庫があるものについては4万円台後半〜6万円台に上昇しております。どういうことよ。

3万円台で販売しているショップはたいてい在庫切れなので、少しでも安く買いたいという向きは入荷時期など要確認でひとつ。

テルミンって、いろいろ難しいのな。

テルミンについて(というかほとんどmoogのTHEREMINIのことだけど)あれこれ書き殴っておりまして、挙げ句音痴極まりないヘタクソな演奏動画なんぞを公開している手前、「お前ごときに何がわかるんだ」と言われそうですが。

困惑の呪文

さほど親しくない人と同席した時、毎度天気のハナシをするのも芸がないんで「50歳になったんで、楽器をちゃんと人前で演奏できるよう、練習しようと思いまして…」なんて振ってみると、「おお、素晴らしい!」なんて感嘆符付きで言われます。

「で、なんの楽器?」との質問を待って「ええ、テルミンです」と答えると、相手の表情がなんとも形容しがたいものとなるわけです。

例えれば、ロープに振られてラリアットかドラゴンスクリューでも来るのかと思いきや、ロープから戻ったら振った相手がコーナーポストによじ登っていた時の顔というんでしょうか。

別の例えをすれば、寝転がったアンドレ・ザ・ジャイアントを相手に、リング外へアピールする前田日明の顔というか。
ま、あからさまに「俺はどう返したらいいんだ」という困惑が見て取れるのですね。

試合が成立しない

そして会話は「へぇ、そうなんだ。へぇ」で途切れます。
「へぇ」を2回も付けたわりには「テルミンってどんな楽器だっけ?」とか「なんでそれを選んだの?」という質問は続きません。

ひとつ言えるのは「その相手がテルミンについて何かしら認知している」ということです。
とは言え、おそらく具体像はありません。その方の人生においてテルミンを積極的に知ろうと思う機会などなかったのでしょう。

「僕はギターをね…」とロープブレークするか、「明日晴れるかなぁ」などとトペのごとき空中殺法に持ち込んだり、「あ、ごめん!電話かかってきちゃった」なんて試合放棄になってしまうのです。

つまるところ、テルミンとはまだまだ楽器としてポピュラーではないのだなというのを、改めて感じる次第です。
無論、こうした反応が返ってくると想定した上で話しかけているのですが。

世界最古が新奇な理由

昭和を通じて日本人100人中100人が知らなかったテルミンが、「あー、アレね」くらい認知されるようになったのは、2001年の映画『テルミン』公開前後から、2007年の『大人の科学 テルミンmini』の爆発的ヒットにかけての期間だと思います。

「世界で最も古い電子楽器」のテルミンは、日本においてまだまだ新奇な楽器なのです。

そしてこの期間、様々なミュージシャンがメディアでテルミンについて語ったり実演したりと、その普及に大きな役割を果たしました。

ただここで言う「大きな」とは、決して「大ヒットに貢献した」という意味だけではありません。逆の意味も含みます。
先ほど書いた「新奇」という言葉の「奇」を助長するようなこともあったと思われるのです。

ミュージシャンたちは「テルミンとはどんな楽器か」を説明する際に、「自分はこんなスタイルでテルミンのライブやってます」という別方面のプロモーションが発生して、残念なことに「変わった人のやる楽器」という印象が付いてしまうケースもよく目にしました。

メディアによっては、あえてスピリチュアリストのごときイロモノで扱ったものもありました。
取材VTRを見たスタジオのひな壇タレントが半笑いになってたりして、端的に言えば「あーあ、やっちゃった感」が否めません。

奏法の不統一

こうした状況を、ロシアで学ばれ教室を開いて普及に努めていらっしゃる竹内正実さんはどう考えていたのでしょう。

僕は竹内さんが2002年に発表された『テルミンを弾く』(岳陽舎刊)という教則本を演奏のバイブルとしていました。
仕事が忙しく、名古屋でも開かれていた竹内さんの講座へ通うのは断念しましたが、テルミンを弄る際は思い出したように引っ張り出して、何度も読み込んだものです。

今でもTHEREMINIを弾く際は、まずクローズポジションをとり、手の関節を痛めないよう指を滑らせて音階をなぞる竹内さんの指導法に則っているつもりです。

ところが動画で多くの演奏が見られる昨今、テルミンプレーヤーたちが手の甲の角度を変えたり、拳を突き出して弾いたりと、その奏法が様々であることに驚きます。

作法から自由であることは大いに尊重したいのですが、その自由の元となる作法をそもそも知らねぇんじゃないんですか、と思われる方も多数です。

メロディを奏でるというより、パフォーマンスツールの枠を抜けきっていない演奏動画をよく見ますが、楽器の魅力を全く引き出せておらず、残念な印象を受けることも多々あります。

テルミンの奏法はギターやピアノに比べてさほど難しいものでもなく(個人的な感想です)、慣れれば譜面が読めなくても、鼻歌気分でメロディを奏でられます。
つまりは非常に便利な楽器なのです。

元祖"調教"楽器

ところで、ここ10年「初音ミク」に代表されるボーカロイドが人気です。
なぜここまで人気になったのかと言えば、それはユーザーたちの創意工夫に他なりません。

ボカロソフトを起動して単に歌詞とメロディを打ち込んだ状態では、なんの面白みもありません。
歌詞によっては発音が甘い場合も多々ありますし、Googleマップのナビの方がよっぽど愛らしく思えます。

この機械的な発音や発声に、作為的なズレや抑揚をつけたり、あるいは本来人間の発音ではありえない子音をコマンド的に付加することで、より人間らしく発声させることを「調教」と言います。

調教の結果、同じソフトを使って同じ曲を歌わせてもニュアンスに差が出て、何人もの「俺だけのミク」が誕生するのです。

実はテルミンも同じような「調教」のしがいのある楽器です。
味も素っ気もない波形に、ポルタメント、ビブラートや音量コントロール、あるいは譜面にない音階を加えることによって、人間的な個性を創出するわけです。

完成度の高いテルミンの演奏は時に「女性のハミングのよう」と形容されることがありますが、これも奏者による「調教」の賜物なのです。

この楽しさは、基本的な演奏技術があって享受できるのであって、単なる自己流ではいつまで経っても得られないものだと思います。

気軽に買えない

そしてテルミンを最も「市民権」から遠ざけているのが、「気軽に買えない」という問題です。

僕の買ったTHEREMINIは2014年に発売され、日本の多くの楽器店で購入できる最新のテルミン※ですが、ネット通販で名の知れた楽器店を見つけて発注すると「在庫がございません」。
さらに別の大手に注文すると「次回入荷の予定が立っておりません」との返信。

発売から5年です。売れて売れて在庫がないわけではありません。
またTHEREMINIは注文を受けてから、職人がカナダの大木を切りに行くような一品モノでもありません。

そこそこ名の知れた楽器なのに、最新商品ですらこの有り様。
これじゃ普及するわけがありません。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/5/57/Big_Briar_model_91A_%40_Moogfest2011.jpg/1024px-Big_Briar_model_91A_%40_Moogfest2011.jpg
Wikimedia Commons

また著名なアーティストがメディアに登場する際は、決まってBig BriarのModel 91Aを伴うのですが、コレ、いま調べてもどこにも売られていません。
仮に買えたとしても、軽く乗用車並みの値がつくのではないでしょうか?

このModel 91Aは、学研テルミンminiのモデルとなったことでもわかるように、多くの人がイメージするテルミンの象徴的存在です。

http://www.korg-kid.com/moog/wp-content/uploads/2016/09/1-23.jpg
www.korg-kid.com/

一方でボブ・モーグが開発した廉価版"Etherwave"がいくら優れていても、あの薄い筐体を見てテルミンだとわかる人は、一般的に多くないと思います。

これは竹内さんの著書にもあるんですが、「演奏用に購入するなら、最低レベルでEtherwave」というのがこの界隈の常識になっています。

しかしこのままでは、一生この「最低レベル」で終わる人の方が圧倒的に多いでしょう。
2019年6月現在、このEtherwaveこそ新品で手に入る最高級のテルミンでもあるのです。

プロによるModel 91Aの演奏を見て「テルミン弾いてみたいな」と思っても、そのテルミンは既に市場から消えている。
これは普及の面から見るとマイナスではないでしょうか?

どうせなら、これからメディアに出る人は堂々とEtherwaveで演奏して、価値の向上に寄与いただきたいものです。

※ベテランからは「テルミンとは認めない」という声もある。まあ気にしないこった。

仲良くやろうぜ

とか問題提議しながら、THEREMINIを演奏してると楽しくて仕方ないワタクシ。
もはやModel 91Aで格好つけようとも思いません。

もともとシンセサイザーが好きなので、THEREMINIがエディターで好みの音色に仕上げられるのもたまりません。

クラシック志向派の皆さんには邪道極まりないでしょうが、どうせ少数派同士、仲良くやりませんか?

まあ、やっぱり自分はただのニッチなんだろうな。
テルミンが変わり者の楽器というのなら、それはそれで長く生きる道なのかなぁ。


今回はnoteからの転載記事です。

THEREMINIで弾いてみた。

moogのTHEREMINIを購入して、まもなく2週間というところですが、この週末は家人が東京に行ってしまったので、リビングに機材を並べて動画のひとつでも撮ろうかと思いまして。

画像に大した意味はありませんが、ともかくいろいろ考えた結果、テルミンPremiumで弾いたことのある、定番曲「白鳥」(「動物の謝肉祭」より)を演奏してみることに。

ちなみに伴奏は、拾ったMIDIデータをKORG Gadgetで編集しております。
このオケで1時間ほど練習してから10テイクほど撮影。
その中で「まあ、まともかな」と思ったのがコレです。

ウハハのハ、音痴も音痴、大オンチですな。
お中元の季節、まさに「ご笑納くださいませ」であります。

弾いてる時はちゃんとピッチが採れていたと思ったんですけどね、出だしでいきなり外した上にボリューム調整にもしくじってる。しかもフレーズにも間違いが。
これで人前に出るなんざ、400万億年早いというやつです。

画像に特に意味はありませんし、この動画にも「テルミンの演奏は難しい」という自己弁護めいた狙いはありません。

「生半可な練習ではこんな惨めな結果になる」という、自分への戒めとして公開することにしたわけです。
次回アップする時は、もうちょっとマシな演奏をお聴かせしたいと存じます。

さて、iPhoneとミキサーを繋いだついでに、ミュージックアプリから小一時間ほど曲を流しながら、THEREMINIで演奏したしたところ、

・Who will know 悲劇(シン・ゴジラ
・愛のバラード(犬神家の一族

あたりが"テルミン映え"しそうな曲でした。
また人前に出せるよう挑戦してみます。

THEREMINIを買ったついでに人生設計。

昨日購入したmoogのTHEREMINI(テルミニ)に、今日スタンドを付けて、人前に出て演奏する準備が整いました。
あとは練習のみであります。

50歳になってから2ヶ月ほど、あと何年生きるのかと思っているうち、自分の趣味である音楽にどう向き合おうかと、わりと真剣に考えておりました。

思えば12歳からシンセサイザーを始めて周辺機器とラジカセを何台も繋ぎ、20代になってオールインワン化でラクになったと思えば、30代はライブハウスにシンセを運んで腰を痛め、40代にはiPhoneでほぼ全ての創作を賄うようになり。

さて50代もソファ横たわって曲を作り、YouTubeに公開するだけの寝たきり音楽家のままでいいのだろうか、と悩んだわけです。

小さなハコでも、区の文化小劇場のナントカ大会でも、あるいは自己啓発セミナーの余興でも、どこでもいいから、人前で演奏できる楽器はないだろうかと。
最近仕事で講演だの講義だのやってると、たまには人前に立つことがそれなりに大事かなと気づくこともあるわけです。

かと言って、今からバイエルからやり直すのも気が滅入るし、駅前の新堀ギターに通う気にもならないし、ヤマハ音楽教室で「どんなときも」をサックスで吹き鳴らすのもナニですし。

さてどうしようと思ったところ、10年ぶりにテルミンの存在を思い出したわけです。
そういや、あれなら安い機材でもそこそこ弾けたじゃねぇかと。

で、いろいろ機材を物色するうちにTHEREMINIに行き着きました。

テルミン原理主義の方からは散々叩かれているマシンではありますが、クラシックの名曲からクラブサウンドの上物まで幅広く使えそうなのはこれだけでした。

ということで、近々自己啓発セミナーの主宰や、30人くらいのお年寄りを相手に壺など売り付ける予定のある方、その場でちょっとした音楽が必要であればお声掛けくださいませ。
目下寝室にて特訓中であります。

案の定、THEREMINIを入手。

以前、何年かおきにやって来るテルミン熱の話題を書きましたが、やはりというか、どうせというか、ほれ見てみぃと言われるのも承知の上で、moogのTHEREMINIを購入したでござる。

http://www.korg-kid.com/moog/wp-content/uploads/2016/09/1-22.jpg

Theremini – moog

現在流通しているテルミンは種類もさほど多くなく、ピッチ用とボリューム用アンテナを持つ演奏用に適したものではmoogEtherwave StandardEtherwave Plus、学研のテルミンPremium、そしてこのTHEREMINIの4択になると思われます。

いきなりBig Briar(現在のMoog Musicの前身)のModel 91Aの出物を狙う野心家さんの場合は別ですが。

THEREMINIは、Animoog由来のDSP音源、スピーカーとディレイを搭載し、スケールによって外しようのない演奏が可能な上に、MIDIやCVコントロールまでできるという、正に「悪魔の楽器」。

誕生からおよそ100年経ってようやく実現したDSP音源。おそらくmoogだからこそなし得た(原理主義者も黙認した)進化だと思います。

多機能ながら4万円前後で、テルミンPremiumのすぐ上の価格帯となるわけですが、考えてみればmoog製ハードにしては破格の安さです。

発売からすでに5年ですが、なぜか縁がなかったんだよねぇ。

流石に発売から日が経ちすぎたせいか、ネット通販には苦労して、3軒目でようやく新品をゲット。
つか、新商品でもないのに入荷未定のものを掲載すんなよなぁ、某店と某店は。

諸事情で職場に配達してもらったので、スタジオにて開封の儀なぞ。

そうそう。ハードウェアとしてはマイ・ファースト・モーグなんですな、これが。
だからパッケージが新鮮でした。

箱を開けてまず目に飛び込むのは「Mooooooog」の文字。おっと"o"が多すぎた。

裏は英文のクイックスタートになっております。
箱の中には本体の他、英語版マニュアルと日本語版、レジスターせい、ファームアップせいと促すメモ、そして保証書、電源系が入っております。

スタジオに譜面台しかなかったので、やむなく乗せてみたわけですけど、ホントは本体の下に金属があっちゃイカンのですよ。
干渉しまくりですから、御法度中の御法度。

まあこんな状況でもキャリブレーションすれば、THEREMINIも「そういうもんか」と納得してくれるようで、それなりにアンテナは機能してくれるんだけどね。

そういう事情でボリュームアンテナの効きには目を瞑り、まずはピッチを探ってみます。

やはり譜面台の影響なのか、安定してるのか不安定なのかよくわからない。ということは不安定なのか。

とは言え、ものの1、2分でクローズポジションからの運指もこなせ、定番の「星に願いを」はなんとか弾ける程度に。
スピーカーとディレイがあるのは最高だなオイ。

普段シンセを扱っていれば、モニターもエフェクターも常備してると思いますが、初めての楽器がテルミンともなると、Etherwaveだったらスタンドにアンプにエフェクトでざっと10万超えでハードル上がっちゃいますから、なにしろ。

しかもありがたいことにヘッドフォンジャックも完備。深夜のレッスンもこれで安心。

フロントの液晶では現在鳴っている音階と、ピッチが正しいかを確認できます。
曲の出だしをキッチリ決めたい時は、ボリュームをオフにした状態で右手をスタンバイしておけばいいわけです。

便利な機能とは思う反面、結構チラチラと視界に入ってきちゃうので、演奏に集中できない人もいるのではないかと。

さて、THEREMINIの魅力のひとつはAnimoogエンジンによる多彩な音源。オリジナルのテルミン波形を含め32音がプリセットされています。

中には本家Animoog同様、時間軸のモジュレーションが入ったものもあり、ディレイの効果と相まって、あのスペーシーなサウンドが楽しめます。

なお単体ではプリセット音をエディットできません。
その代わり、moogではipad/Mac/Win用のエディターを無料配布しています。

ちなみに製品ページではiPadアプリしか見当たりませんが、ユーザー登録すると、メールでMac/Win用アプリのダウンロードURLが送られてきます。
だから「レジストせい」というお知らせは大事です。

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画面はiPad用のもの。PC用もほぼ同じです。
パラメータはアンテナに紐付いた変調もありますが、基本的には減算方式のアナログシンセに馴染みのある人にも扱いやすいもの。
USB接続されたTHEREMINIの発音にもすぐ反映してくれます。

ただ、もうひとつの売りであるスケールですが、通常のテルミンの演奏に慣れてしまうと、どうもしっくり来ないということは書いておきます。

初めてテルミンに触れる人にはいいんでしょうが、ある程度かじってしまうと、結局ピッチの変化幅を通常のテルミンに修正してしまうかと。

そうそう、ファームウェアのアップデート確認は必須(2019年6月時点で1.1.1)。
アンテナからのビッチ幅が改善され、ノブの挙動がオリジナル・テルミンに近くなるTHEREMIN MODEが追加されます。

とりあえず今日はこんなところで。
自宅に帰って頑張って弾きこなしてみよう。

小型サンプラー登場に「やっぱりハードだよな」と思う。

どんなWebサービスにおいても、「あなたへおすすめ」やプリロール広告というのはとてもウザイのですが、たまには有益な情報もあるもんだと感じた件。
これは思わず「おっ!」とクリックしてしまいました。

この"blackbox"、ひと目見て何ができるとかではなく、まずそのサイズ感にピクリとしました。
こちらが商品ページのようです。

動画の公開から3週間ほどですが、すでにメーカーサイトでは在庫切れとなっております。

https://1010music.com/wp-content/uploads/2019/03/1010Music_Blackbox_06-Warm.jpg

見たまんまインターフェイスにタッチスクリーンを採用したサンプラーで、波形エディットはもちろん、シーケンサーも内蔵したワークステーションのようです。
また波形をスライスすることも可能とのこと。

波形はmicroSDに読み書きでき、USBによって拡張もできる模様。

これがハードで、しかも恐ろしくコンパクトなサイズで発売されたことにかなり興味があります。

メーカーの製品サイトを見ていると、シーケンサーやらポリシンセやらエフェクターやら、ほぼ同じサイズのタッチスクリーン付きモジュールが並んでおり、どれも599.95ドルという、スーパーの特売のような値付け。

機能的に見ると、今回の"blackbox"は、それぞれのいいとこ取りをしたようなオールインワン機器という印象です。

"blackbox"は、昨今の多機能なDAWに比べればミニマムな仕様ではありますが、こういう機材を目にすると、途端にアドレナリンが分泌しちゃう貴兄も多いかと。

ヴィンテージな機材を何台も揃えたり、プラグインをやたら入れ過ぎてドンシャリ化させるより、逆にメリハリの効いたアレンジができるとも言えます。

ちなみに現時点で国内での取り扱いはありませんが、1010music製品はRock oN Companyさんが販売していますので、そのうちラインナップされると思います。
焦らずにパンツ脱いで待っとけ、というところでしょうか。

さて、僕がiPhoneのシンセアプリ群に惹かれるのは、まさに手の平で世界を制覇できる(個人の感想です)夢を描けるところにあります。

安いシンセや周辺機器を繋いで10代にやってたことが、20代にオールインワン化し、やがて30代で重いハードに腰をやられ、40代に手の平化。肉体も脳も老化していく中、創作意欲と仕上げはむしろ加速しています。

ただ、アプリがいくら高音質化しても、ハードには太刀打ちできない「壁」があります。

その「壁」が何か、というのはDAWにしか向き合ってこなかった人には理解できないと思うので、説明は割愛しますけれども。

世界を変えちゃうのは案外こうした小型のハードかもしれないな、とわかる人にしかわからないハナシで終わります。
生きててごめんなさい。

真空管やら円盤やら…新音源スケスケシンセがトレンド?

先日KORGからvolca modular、volca drumの2機種が出たと思ったら、またもや新機種登場で、界隈は騒然としております。

https://cdn.korg.com/jp/products/upload/07887ab0a1001f02a115e9c90af92da6.png

ありそうでなかった青のvolca。黒とのグラデーションで引き締まったナイスなルックスですな。

数年前にKORGから発売されたのは知ってましたが、音楽用途で買おうとは思ってなかった真空管Nutube。
まさか音源として登板することになろうとは。パネルにも青々と輝くNutubeの勇姿がスケスケに曝け出されております。

ご存知の方も多いでしょうが、これまでKORGは、真空管をこれ見よがしに搭載した楽器をいくつか発売しています。

http://www.vintagesynth.com/sites/default/files/2017-05/emx1.jpg
vintagesynth.com

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/dc/Korg_TRITON_Extreme.jpg
commons.m.wikimedia.org/

これらの楽器では音源のアウトプットに、エフェクト的に真空管が使用されておりました。
"Valve Force"なんてフレーズも懐かしいですなあ。

ところが今回発表されたvolca nubassは、真空管オシレーターに採用しちゃった、というところがなんとも斬新です。
世にも珍しい真空管シンセサイザーであります。

実は「真空管シンセ」というフレーズに見覚えがあるな、と思ったらコレでした。

これはPC音源ですが、調べたところ、ハードでも真空管オシレーターに使用したシンセはありました。

当然気になるのはサウンドです。
見るからにアナログで、割ったら中から香ばしい匂いがプイーンと漂いそうな真空管ですから、これが音源ともなれば、随分な電子音が轟く予感がいたします。

volca nubassのオフィシャル動画では、キックとシンクさせていてわかりにくいため、単体の音はこちらで。

動画なので、圧縮やらなんやらでそのものズバリの音ではないでしょうが、意外と鼻摘まみ系な音です。
これまでのMS-20直系からラダーフィルターに変わったこともあるでしょうが、いい意味で存在感のある、端的に言えば癖のあるサウンドだなと思いました。

さて、真空管とは別に、一風変わったシンセも登場しております。

おなじみのICONさんによれば

そんなGamechanger Audioが今回お披露目した「Motor Synth」は、世界で初めて“電気機械方式”を採用したデスクトップ・シンセサイザー。光学式ディスクを小型の直流モーターで高速回転させ、ディスクに印刷された波形を赤外線フォトセンサーで読み取ることで音を生成するという、大変ユニークなシンセサイザー

だそうです。
しかも4音ポリの2レイヤー、シーケンサーとアルペジエイター搭載、CVアウトもあるということです。

なんというか、8つの円盤がクルクル回ってるだけで満腹感がハンパないのですが、実際にネット上でアップされている音を聴くと、不安定かつ不思議なサウンドです。
目を閉じて聴かないと、自分を見失いかねませんね、これは。

これらもアナログシンセとカテゴライズされるんでしょうが、これからのシンセは、アナログVSデジタルで語るものではなくなりそうです。
現場からは以上です。